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幸せな報復

第16章 新天地

 数万年間、けだもの族の安定的な人口統制が掟によって忠実に実行され維持されてきた。しかし、生物は数万年の長い時間の中で環境変化を克服するため幾世代にわたって心身を変化させた。生物は生きるために生きてきた、と言ってもいい。
 猿人は物を手にしたことから人類への分岐が起きた。ものを使うことで食べ物を得る術が増えれば人口も増えていく。狩りを群れでやれば獲物は捕りやすくなる。言葉も生まれる。そうやって群れが大きくなる。
 人口が増え住むところが狭くなれば新しいエリアに移る群れが出てくる。そうやって人類は世界へと広がっていった。肌の色もそのエリアの環境を生きるために心身を進化させた結果と言える。
 けだもの族もまたしかりである。愛に目覚めた最初のけだもの族がエリアを出て外界へと広がった。それがけだもの族の族長である山口仁美だった。
 その進化は肉体だけではなく彼女の精神を進化させた。愛という感情を生んだのである。それまで、けだもの族はオスが生まれると、非常にも間引きした。メスだけで群れを作るためオスを間引いたのだ。オスは発情すると、見境なくメスと交尾し人口が増加してしまうので排除するようになった。メスは掟を作り従った。掟に逆らうものはだれ一人いない。
 前述したとおり、オスは種族の人口を増加させる必要性ができたときのみ、他部族から拉致し子どもを生ませるため交尾を許した。子作りという目的を果たしたオスは幽閉され、他のメスをはらませないよう隔離され、性奴隷として5匹のメスに仕える。
 ところが、脳内に愛が生まれた新・けだもの族が発生する。愛情を得た新・けだもの族はハーレムを出て外界へ脱出していく。ハーレムから人口流出が起きる。けだもの族の掟である人口統制が崩壊の危機になる。新種族の抹殺のためハンターが組織された。彼らはハーレムからの脱出者を見せしめのため交通事故死に見せ掛け殺した。
 仁美は、今まで愛を自覚することなく生きてきた。拉致された1匹のオスをメス5匹がレイプしながら教育する様子を族長として平然と見ていた。
 それがある日、急にその様子に不快さを感じる。彼女の肉体に生理という変化が起きる。仁美もまたメスであるから生理が起きた。突然変異の切っ掛けは生理であったのかもしれない。

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