
ふざけた奴等
第2章 慣れと飽きの境
王道漫画が好きだった。
恋愛とか混ざらない、正にストーリーと勢い重視のファンタジーものが。
いきなり日常が異変で、とかも大好物。
だって、面白すぎるじゃん。
いつもの風景に化け物とか。
大量殺戮系は流行りすぎだけど。
魔法少女とかはいらん。
熱い主人公と、なんかクールな奴と、馬鹿な巨漢がいりゃ十分。
「うわ、なにここ」
だから、ピンと来た。
目を開けて、真っ暗な空の下、見慣れない森に寝転がって。
うわ、漫画だって。
「頭痛ぇ……ってなんだここ」
「なぐっち、発言に新鮮味がない。テイクツー、はい!」
「あらやだ、どこここ」
「お前が言うのかよ」
しっかり拾ってくれるなぐっちを無視して立ち上がる。
下は芝生っぽい。
りーやんは服の汚れを払いながら近くの樹に触れた。
白い手の甲でなぞるように。
見た感じは杉か。
「……本物」
「固くて太い?」
「その上黒い」
「お前らなあッ、んなことしてる場合か」
場合じゃない。
こういうときは現状把握してる間になんか起きてくれるんだよ。
多分。
「マジでどこだろな」
「あ、携帯」
思い出して取り出す。
「新着だ。あのガキ?」
「なんだったのあいつ」
「自分で考えろよ、なぐっち」
「んー、本当これ?」
りーやんが苦笑する。
新規メッセージには、こう書いてあった。
「本物になれたらゴール」
うわ。
「イミフ」
「意味の行方不明」
「捜索隊を派遣します、こたろん隊長」
呼ばれたものの反応できない。
本物になれたら。
なんのだよ。
なにをだよ。
いつまでにだよ。
そしたら戻れるのかよ。
とりあえず。
「腹へった! コンビニ探すぞっ」
「さすが隊長、前向き! コンビニがあると思ってる!」
「うっせー、なぐっち! なかったらニーブラかまして何か捕まえるんだよ」
りーやんはずっと携帯で誰かに連絡を取ろうとしてたが、顔を歪めて地面に叩きつけた。
