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ふざけた奴等

第2章 慣れと飽きの境


 罅入った液晶を踏みつける。
 ばきり、と音が響いた。
 逝ったなアレ。
「ちょ、なにしてんのりーやん!」
 すかさず新しい携帯を胸元から出してポケットにしまう。
「何が?」
「え? 何個もってんの。携帯」
 一瞬の間。
「……四?」
「お坊ちゃんめ!」

 森で迷ったら頂上を目指すべき。
 常識だ。
 だがそれには前提がある。
 救助が来ると言う前提が。
「コンビニどころか街すらねえじゃん」
「こたろん、おんぶしてぇ」
「休憩だ、休憩!」
 少し開けた場所で座り込む。
 月明かりのお陰でぼんやりとは見えているが、まだ真夜中と云った感じだ。
 照明アプリを起動する。
「まぶしっ」
「あ、ごめん。あ? え、うわ」
「こたろん?」
 視線の先を二人が追う。
 暗闇のなかで小さな人影。
 間違いない。
「コートのガキ!」
「早雪って名前があるもん。うるさいお兄ちゃん達だね」
 え?
 ショタボイス。
 可愛……
 明かりに照らされた早雪は、銀髪にくりんとした眼が印象的で。
「ここどこ?」
「おいでってなんなんだよ」
「どこに住んでんの?」
「こたろんだけ質問おかしくね?」
 はあ、と溜め息が聞こえる。
「ボクはこの先の知念という町に住んでるの」
「答えるのそこじゃねえだろっ」
「お兄ちゃん達にも来てもらうから」
「早雪ちゃんの家泊まっていいの!?」
「黙れ、お前」
 なぐっちに後ろから口を塞がれる。
 ああ。
 見れば見るほどタイプ。
 紅い頬。
 低身長。
 唇の突きだし方。
 いらっとした眉。
 可愛い。
 昨日告ってきた後輩もヤバかったけど段違いだ。
「どういうことかな? これはなんの目的?」
「笠羽兄ちゃんは話が通じそうだね。ちょっと協力してもらうために呼んだんだけど」
「なんで名前……」
「華麗な僕が有名だからでしょ」
「もう死ね!」
 なぐっちが空に叫ぶ。
 協力?
 それしたら見返りもらえんのかな。
 あの小さいからだをどうにかできんのかな。
「んぐーぐん、んくくくくくくんぐ!」
「黙ってろって!」

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