クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第8章 カタストロフマシーン〈ストーム〉
通信を終えたオーロラは端末を開き、送られてきた画像を確認した
炎に包まれて小規模な爆発をしている「ストーム」と味方のモビルスーツ、ギラ・ドライセンの映像だ
それを横からひょいと小さな女の子が覗き込む
“キアラ”だ
キアラはさも楽しそうに笑みを浮かべた
「オーロラ!オリジナルがこれほどだったらわたしのマシーンもちょっとは期待出来るんじゃないか?」
小さな女の子が歳上の女性に同等な立場で話しかけていることが、シェフリーには解せない
この旅の途中、何度殴りかかってやろうと思ったか!
その空気を読んでか、オーロラが解説するかのようにやんわりと会話を続けているので、今のところ大きな問題にはならなかったが、ジェフリーはこの子どもが大キライだった
「わたしのマシーン?? どこに?」
ジェフリーはキアラの言葉に対して、キアラにではなくオーロラに問いかけた
その問いかけにオーロラが応えようとしたが、先にキアラが反応してしまった
「オジサン、なぁんにも知らないで、よくアゼルバイジャンまでついてきたね?」
ジェフリーは本当に殴ってやろうか、と思ったがオーロラが彼の腕をそっとさわって制した
「ジェフリー副長、今から我々はキアラ専用のカタストロフマシーンを受領しにいくの
宇宙(そら)から降りてきたカタストロフマシーンは一機だけじゃないの
古いデータを元に長い歴史の中で売買されて、それがイスタンブールの海峡で入手出来たわけ
さすがヨーロッパとアジアの交差点ね
ハルフォード提督はこの日を待っていたのね、何年もずっと
オリジナルとほぼ同じと言われているものはコピーと言うより、まったく同一のもの
それが此処アゼルバイジャンで建造されているの、それを受け取りにはるばる来たわけ」
「そして、ソレは私のような〈チルドレン〉にしか動かせない、だからわたし専用のカタストロフマシーンなのよ、ジェフリー!」
キアラは自信満々に腕を組んで、さらにジェフリーを挑発していた