クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第8章 カタストロフマシーン〈ストーム〉
〈ストーム〉は追跡者たちを蒸発させたあと、空高く上昇していく
それはまるで無人の空飛ぶ幽霊船のように
バルケシルの山、荒れ果てた丘の上をゆっくり飛び去っていくのだった
レヴァンたちは慌ててその場を撤収する
地上からはもう追えないだろう
すぐさま連邦の支援グループと連携して、ゾーナタへ状況を伝える
レヴァンたちのレポートは実際には正確では無かった
彼らから見た戦闘エリアの状況では、未知の巨大な物体がゼントリックス軍のモビルスーツ部隊を全滅させたように思えたからだ
さらに友軍の特殊任務に就いていた若い兵士2人も巻き添えを食らった、と報告していた
もちろんそれはすぐさまゾーナタに乗り込んでいたスティーブ・グリメットにも伝えられ、彼はすっかり落胆してしまった
娘を失い、そして親友となるかもしれなかった男も失った
自分のやろうとしていた事が間違っていたかのように自責に負われてしまう
巻き込んでしまった、と
ゾーナタの作戦司令ヨハネスは哨戒チームを派遣し、未確認物体を追跡するように命じた
当時にそれはハルフォード提督率いるゼントリックス軍にも情報は伝わる
せっかく鹵獲したカタストロフマシーンをみすみす逃してしまったうえ、貴重な基地をも失くし、さらに5大将軍のうちの一翼、アフターシン軍団を失ってしまったのだ
ゼントリックス軍は全軍に緊急体勢を伝え、失踪したカタストロフマシーンの行方を追った
そして秘密裏に発足したばかりのサッドウィング隊に連絡を取る
「オーロラか?わしだ、ハルフォードだ、
計画が前倒しになりそうだ、
至急、例のものをテストしてくれ」
「かしこまりました、提督」
通信を終えると、ふぅとため息をついてシートに腰を深く沈めた
「わしよりもっと先の世代になるだろうと思っていたが……、世界の終わりはすぐそこにやって来るかもしれんな……」
ハルフォード提督は葉巻を手にしたが、やはり吸うのをやめて引き出しをそっと閉じるのだった