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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第2章 旧市街地の戦い


ラーズはバックミラー越しに火を噴く敵のフリューゲルを見た


「あの子どもが落としたのかッ!?」


すると後ろの座席にいたアリッサが声を掛けた


「うちの娘たちはみな優秀よ、そこいらの正規パイロットよりもね、それよりバスを北上させて」


ラーズは突き当りを北に折れた


“娘たち…? この子どもたちみんなこの女性の娘なのか?養子?だよな?
 この子どもたちが皆パイロットだとでも言うのか?”


バスは爆撃された廃墟を通り抜けて海岸線を北上させていった


あたりに動く物がないため激走するバスはとても目立つ


敵のフリューゲルは旋回して再びバスを狙う


いつの間にか地上のジムⅢは姿を消していた


2機のフリューゲルは再び地上スレスレを滑空して海岸線の道路沿いにバスを狙う


その瞬間!


レジャー施設の大きな看板の陰からジムⅢが飛び出してきた!


正面からビームライフルを放つ


フリューゲルは慌てて上昇して回避しようとするが、それはわざわざ敵に腹を見せるのと同じであった


ドゥッ!!  ドゥッ!!


2機のフリューゲルは回避行動を取りながらも火を噴き、そのまま海に墜落した



そこへ連邦軍のベースジャバーが飛行してきた
2機分のモビルスーツを載せて運搬できるベースジャバーは1機のジムⅢだけを載せていた


「乗れ、ラーズ!!未確認飛行物体に近付こう!」


コックピット内の通信が響く

だが少女は返事をしなかった

代わりに少し考えてから背中のスラスターを吹かせ一気にジャンプ、ベースジャバーに乗り込んだ


“あの巨大な飛行物体に近付けるかもしれない
 あそこからは何か声が聞こえてくる
 もしかしたら、あの中にわたしたちの別の姉妹が居るのかもしれない”


コックピットに座っていた少女は無言で頭の中を整理していた


眼下でバスが離れていくのが見える


皆の頭の中の声が聞こえなくなる


自分は初めて姉妹から離れたような気になった


隣のジムⅢが本隊に連絡する回線が聞こえてきた


「こちらコートガード隊のジェイムズ・フィールズとラーズ・ローズ、地上の民間人は避難は完了した!今から〈ゾーナタ部隊〉と合流する!」


2機のジムⅢを乗せたベース・ジャバーは黒海の海原へ飛び去った


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