
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第2章 旧市街地の戦い
これから戦場へ向かおうとしていたジェイムズ・フィールズは画面上のアイコンに気付いた
戦闘中に隣の機体からメールが届いたのだ
「なにやってんだ、ラーズ??」
アイコンを指定しメールを開く
〈通信マイクが故障している、通信は文字で送る、そちらの声は聞こえている〉とある
「なんだ、また故障かよッ!?整備兵に言っとけよ?とりあえず戦闘中に文字を読んでられねぇから〈読み上げモード〉にしとくわッ!」
ジェイムズが話すとすぐにメールが着て、機械の合成音が「了解」と伝えてきた
ラーズ・ローズに成りすました少女は戦闘前に作戦司令書の画面を立ち上げて確認する
黒海海域においてトルコ側の私的軍隊ゼントリックス軍が派兵された
ブルガリア側の連邦軍黒海警備隊コートガードは近隣の特殊任務部隊に応援を要請
北欧戦線から増援に来ていた連邦軍〈ゾーナタ部隊〉とコートガード部隊が合同でゼントリックス軍を牽制することになった
ゼントリックス軍は未知なる飛翔物体を確保しようとしている
ゾーナタとコートガードの部隊はそれらを制圧するのが今回の指令となっていた
「……ふん、普段敵対している地球連邦軍側に私が付いてるのは皮肉だな」
少女は子どもらしくない不気味な笑みを浮かべた
そのとき隣のジムⅢ、ジェイムズ機から通信が入ってきた
「おい、ラーズ!さっきのお前の戦闘を遠目で見ていたぜ??
お前3機も撃墜しちまって!
新米のお前さんがいつからエースパイロットになっちまったんだ?」
戦闘前の軽い会話のつもりで話しかけてきたのだろう
少女はまずいな、と思った
少女が話しをすると自動的に文章化されてメールの文字となってジェイムズ機に通信された
ジェイムズ機側のOSが自動的に読み上げていく
「向こうも新兵だったんだろう」
それを聞いてジェイムズは大笑いした
「ちげぇねぇッ! ゼントリックス軍だって即席の軍隊なんだ!
手強いエースパイロットなんかより金で集められた傭兵モドキみたいなのばっかりなんだろーよ?
俺達でも余裕でヤれるさ!」
どうやらジェイムズ・フィールズも戦い慣れした古参兵ではないようだ、と少女は安堵した
