クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第10章 ムーンブレイド
マリナが慎重に歩みを進めていたとき、通路の正面に子どもが立っていた
“あのバイクに連れ去られていた女の子ッ!
良かった、逃げだせたんだッ!?”
ほんの一瞬、マリナの顔が破顔する
その瞬間、背後に人の気配がした!
マリナが振り返ると同時に銃を向ける
すると目の前まで猛ダッシュして突撃してきた男の姿がッ!
ジェフリーは背後から接近するつもりだったが彼女が突然気配を察して振り向いたので、慌てて足を止め急ブレーキするようにカカトに力を入れる
ジェフリーが動きを止めた瞬間を狙ってマリナは躊躇なく引き金に指をかける!
そのわずかな瞬間
いつの間にかマリナの目の前まであの女の子が現れた!
“……いつの間にッ!?”
女の子は器用にマリナの指ごと拳銃をグルンと向きを変えさせ、ボキッとイヤな音が響いた!
「ガハァァァッッ!!?? な、なにをッ!?」
「ザンネン、力が足りなかったわね
手首の骨を折ろうとしたのに、このお姉さん案外力が強かったわ?」
マリナは動揺した
“この子ども、普通じゃないッ!?”
痛めた右手をかばいながらもマリナはすぐに次の行動に移れるよう身を屈めて脚に力を溜め込んだ
「おおっと、そこまでだ、お嬢さん」
挟み撃ちに遭っていたため、女の子のほうに向き直っているあいだに反対側からのジェフリーの接近に対応出来なかった
マリナの背中に銃口が当てられている感触がする
さすがに身動きがとれない
仕方なくここは降参するしかなさそうだ
マリナはゆっくりと銃を床に落とし、それをジェフリーが拾い上げた
「賢明だな、さすが兵士だ」
降伏することは恥ではない
生きてさえいれば次のチャンスを生かせられる
自暴自棄になって無意味な突撃をしても撃たれるだけなのだから
マリナは悔しそうに背後のジェフリーのほうに向き直る
彼の手元を見てみるとそれが銃ではなく、ただの携帯端末の先端を当てていただけだった
「きさまッ!」
「動くなって!お前の銃はこっちにある、それに俺はむやみに撃ちたくないんだがそっちのイカれたガキが即座にアンタを殺そうとしそうだ
頼むからおとなしくしておいてくれ!」
「ジェフリー!殺しておいたほうがいいのに!」
女の子、キアラは見た目の幼さからは考えられない言葉を放っていた……
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