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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第11章 眠り姫


「ひっっ!!??」


「声をたてるな、その兵士のように殺すぞ」


キアラは警護兵から取り上げたライフルを看護婦の背中に突き付ける


「服を頂戴する、そのあと兵士の上着もこちらへ寄越せ、おかしな真似をしなければその兵士のように殺す」


キアラはわざとらしく無表情で言い放つ


看護婦は制服を脱ぎ肌着姿になるとカプセル内に横たわっている兵士の上着を脱がす


兵士の上着に銃弾のあとが無いことには気付いていたが抵抗して痛い目に遭う気も無かったので大人しく自分も隣の医療カプセルに入った


キアラは看護婦の格好をして兵士の上着をワゴンに押し込み部屋を出て行く


「カプセルのカバーは外からロックした

 誰かが来たときに開けてもらうといい」


それだけ告げるとキアラは廊下に出ていってしまった


看護婦はふぅ、と緊張感がとける

キアラの正体を知らない看護婦は“あの女性はなんだったのだろう? 特にケガをして運び込まれたようではなかったけど?”と不審がったが自分が巻き込まれてまで追及する気もなかった

どうせこのトルコとアゼルバイジャンの混合編成の軍隊は今だけの仕事なのだから、と考えるのを止めた




その頃、



とある部屋では全裸のままテーブルに縛り付けられたトラビスが横たわっていた


顔は腫れ上がり、指は何本も折られ、暴行されてから放置されていた


何人もの兵士たちが精を放ったように思えたが、それが何人だったのか覚えてはいない


近くの床にはボロ雑巾のように打ち捨てられたアトキンスの姿もある


もうずっと動かない様子を見て“彼は生きていないかもしれない、私のせいで彼を巻き込んでしまった”と若い兵士に罪悪感がわく


身体の痛みと心の痛みが押し寄せてくるが、どうせ自分も生きてこの部屋から出られないのだろう、とどうでもよくなっていた


数刻して部屋の扉が空いて誰かが入ってくる


視線の先にはワゴンを押した看護婦がいる

“今さら治療か?”

動けないトラビスに声をかけてきた看護婦の声は聞き覚えがあった


「えらく痛めつけられたようねトラビス」


看護婦の格好をしたキアラが無表情で立っていた






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