クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第11章 眠り姫
ふっとキアラは血の臭いを感じた
なんとなく少年兵アトキンスの顔を思い出す
「……お前……あのふたりを拷問したな?」
キアラはキッとオーウェンを睨みつけた
オーウェンはぎょっとして自分の身なりを確認する
よほど後ろめたいようで一気に彼が緊張して発汗するのがわかる
「………わたしはムーンブレイドのなかでずっとひとりで過ごしてきた、だから人の匂いに敏感なのだ、お前の身体からは邪悪な汗の臭いと血の臭いがする
ほんのりアトキンスの血の臭い
そしてトラビスの汗だ
お前、少し前にあのふたりを拷問していたのだろう?
そして私のところへ来た?
えらく笑顔ですっきりしているが、精を放った直後で身体中の筋肉が弛緩しきっているな?
お前、トラビスに何をした?
ははーーん?
お前ら、さっきまでトラビスをなぶり倒してきたな?
むごい奴だ」
キアラは顔を隠し、オーウェンを拒絶する
見透かされたオーウェンは慌てて立ち上がり、退室した
扉の外で待機していた警護兵に「厳重施錠しておけ!逃がすな!」と言って出て行った
さっきまでの笑顔に反して彼は監禁指示を出した
どうせ先ほどの解錠していたというのも嘘だろう
瞬時に察したキアラは常人とは思えぬスピードで点滴チューブを引き抜き、閉まりかけた扉のわずかな隙間に挟み込んだ!
警護兵はてっきり施錠出来たものだと思って背を向けていて、自動の扉が障害物でまた開閉したことに気が付かない
点滴のスタンドを背後から叩きつけられた警護兵は床に崩れ落ち動かなくなってしまった
キアラは廊下に出て周囲を警戒する
誰も居ないのを確認して卒倒する兵士を部屋の中に引きずる
数分して誰かが近づく音がする
ワゴンを押す音、そして靴音
部屋に入ってきたのは白衣の看護婦だ
いつも廊下で立っている警護兵が居ないことでキョロキョロしている
看護婦がワゴンを押して医療カプセルに近づく
カプセルの中にはキアラではなく気絶した警護兵の姿が…!?
その背後にキアラが立ち尽くしていたことに看護婦は気付かなかった……
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