
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第3章 グリメット城
「おい、奥さん!何処まで走らせるつもりだ!? あんまり戦場から離れちまったらマズイんだ!
俺のモビルスーツもアンタの娘が乗ってっちまったし……
マズイよなぁ、本当に
民間人にモビルスーツ盗難されましたなんて言ったら懲戒ものだよ……」
「アリッサよ、アリッサ・グリメット!
安心しなさい、うちの娘はそんなヘマをやらかすような子ではないから
モビルスーツぐらい乗りこなせる」
「ホントかよ? この子たちと変わらないぐらいだろ? まだまだ子供じゃないか?」
「いいから、ラーズ君だった?
とにかく海岸線を北上して頂戴!
サニービーチまで戻ればうちの人の船と合流出来る筈だから!」
「サニービーチ!?おいおい、待ってくれよ
そんな遠くまで走らせるつもりか?
俺はモビルスーツのパイロットであってバスの運転手じゃねぇーんだぞ!?」
「民間人を安全なエリアまで移送することも連邦軍の士官の任務よ、それにここにはあなたしか運転出来る人居ないじゃない?」
「……このおチビちゃんたちはモビルスーツは乗りこなせるくせにバスの運転は出来ないのかよ?
あ〜あ、今日はついてないぜ?
せっかく黒海警備隊の奴らにギャフンと言わせてやろうとしてたのによぉ!」
するとそれまで黙っていた9人の少女たちが立ち上がってきた
みな髪の色や、肌の色が異なるものの同じ顔をしていた
「な、なんだよ?座っとけよ、危ないだろ」
「お母さま、この男の子とてもうるさいわ」
赤毛の少女が口を開くと続けて黒毛の少女が口を開いた
「お母さま、撃ち殺してもいい?」
10歳くらいの少女とは思えぬ残酷なセリフを発し、ラーズは薄気味悪くなってきた
「おい、なんだよ!怖いこと言うな!
アリッサ、何とか言ってくれよ?
アンタの娘なんだろ!?」
「……みんな、やめておいて頂戴
ラーズを撃ったらバスの運転手が居なくなるわ、そうすればお父さまに会えなくなるわよ」
ラーズはもっと言い方があるだろう、と思ったが余計な事を言って事を大きくさせたくなかったので黙っていた
「運転手の仕事が見つかって命拾いしたわね」
「次に無駄口を叩いたら後ろから撃つわよ」
「アンタの命もサニービーチまでよ」
「せいぜい最後のドライブを楽しみなさい」
少女たちは皆無表情であった
