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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第3章 グリメット城


ようやくサニービーチのリゾートホテルまで戻ってきた

表には多くのホテルの従業員が出迎えてくれた


「奥さま!お嬢様方!ご無事で何よりでございます! あ、お怪我を……!」


ホテルのフロア部長は太枠のグリメット家の奥方が大怪我をしているのを見つけて青ざめた


イギリス貴族の上得意様一行に失礼があってはならないのだ
それが自分たちのしでかしたわけでなくとも


「私のことは良いから、主人に…、スティーブに連絡をとって頂戴!
 娘がひとり戦場に残っているのよ!」


「ええッッッ!!?? は、直ちに…!!」


ボロボロのバスから降りてきた一行はぞろぞろとホテルの正面玄関に入っていく

パイロットスーツのままのラーズもついていこうとしたらドアマンに止められてしまった


「運転手の方はここまでで御座います……」


「えっ!? おいおい、ちょっと待ってくれよ
 アリッサ!アリッサ!こいつらに説明してやってくれよッ!?
 巻き込まれたのは俺のほうだぜ?」


貴族の奥方の名前を軽々しく呼びつけた事でラーズは数名のホテルマンに取り押さえられてしまった


アリッサはとっくに救護のため中へ入ってしまい、取り押さえられていたラーズを眺めていた9人の娘たちはげらけら笑っていた


「くそうっ! お前たち、おぼえておけよ!
 今度は助けないからなぁぁッッッ!!」



ラーズ・ローズがホテルの最上階にあるスィートルームへ案内されたのはそれから30分後であった


広いスィートルームにぽつんと取り残されていたラーズは目の前の飲み物を飲んでいいのか、後からぺらぼうな請求が来るのではないかと判断に迷っていた


するとドアが開いて、数人のメイドたちに囲まれたアリッサ・グリメットがようやく現れた
腕には包帯が巻かれている


アリッサがメイドたちに手をふると彼女たちは無言で部屋から出ていった


「お待たせしたわね、ラーズ君」


「たいそうな歓迎を受けたもんだぜ
 俺から何を言っても信じてもらえなかった」


「怒らないで、彼らも仕事なのよ」


アリッサが目の前の飲み物を手に取ったので、ラーズもようやくグラスを手にした


酒なのかと思って口にしたものの、ただのフルーツジュースのようで、金持ちはこんなものを飲んでるのか?と疑問に思ってしまった


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