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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第1章 サニービーチ

ニコライ・ギャウロフはホテルのドアボーイ


退屈な仕事だが、たまに楽しいこともある


今週は「当たり」だった


イギリスからやって来た大家族がバカンスに訪れていたが、そこの娘たちは最高のキュートさだったのだ


特にルッキズムな偏重も持たないニコライだったが、この娘たちを見てから「やっぱり女のコはカワイイのが正義だ!」と思うようになった


それもここの娘たちは10人


みな同世代のティーンたち


ドアを開けるたびに「ハーイ」と挨拶もしてくれる


連泊しているので今では顔なじみだ


「おはよう、コーリャ」とニックネームで呼ばれた時は天にも昇る感動だった


ハイヤーの運転手ボリス・クリストフが手持ち無沙汰にやって来た


「ニコライ、ご機嫌じゃないか」


「わかる?いゃあ女のコっていいなぁボリス」


「ああ、あの10人の娘たちか、やめとけやめとけ、ドアボーイなんて相手にされるもんか」


「そんな恐れ多いことまで考えてないよ、挨拶するだけでじゅうぶんだよ、俺に向かって俺だけにウインクしてくれるんだぜ、たまんないよ」


浮かれているニコライにボリスは呆れた


「昼間はビーチで過ごして、夕方からは街にショッピングに出るらしいぜ、リムジン2台出せってさ」



「ビーチでたわむれてるお嬢さんの光景もいいなぁ」



ニコライの浮わついた表情を見て、ボリスはこれ以上話しを続けるのを止めた



ブルガリア共和国


バルカン半島の南東、ネセバルの街から少し離れたリゾート地


夏のバカンスにやって来たのはイギリスの富豪、スティーブ・グリメットと奥方、そして娘たちだ


サニービーチでは娘たちが波とたわむれ、グリメット夫妻はパラソル越しにビーチベッドでワインを嗜んでいた


「貴方は泳がないの?スティーブ」


「ダメダメ、真っ白なボクの肌は太陽の日差しなんて受け止められない!アリッサ、キミこそ娘たちと泳いできたら?」


「やめてよ、シミが出来ちゃう」


夫婦は日陰から出ることも出来ず、娘たちを見つめた


「若いっていいわね」


「怖いもの知らずって怖いなぁ」


夫婦はサングラスをかけ直した






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