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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第1章 サニービーチ

娘たちはトップレスのまま若い肢体を光らせている


黒い髪をひとつに束ねた娘

金髪をツインテールにした娘

赤毛をお団子にまとめた娘


彼女たちは白い肌もいれば、浅黒い肌、モンゴロイドな肌も居ててんでバラバラな人種のよう


だが、その顔立ちはみな同じ顔の娘たち


娘たちはスティーブ・グリメットの養女たち


戦略研究所から戦争の道具に仕立てられていた悲しき存在


試験管ベビーの彼女たちに本当の親は居ない


特殊能力を組み込まれた彼女たちは戦争屋に売られ、やがて実業家のスティーブの元に集まった


私設軍隊を持つ実業家スティーブはグリメット家の元当主


今は弟に事業を任せて、自分は裏の仕事を持つ


取引先の担当者だったアリッサと恋に落ち、クローンの娘たちを引き取って「家族」となった


「お父さまとお母さまは泳がないのかしら」

「せっかくブルガリアまで来てるのにね」

「ほっておきましょ、二人きりもいいものよ」

「ほっとけないわ、だって私たち家族じゃない」

「野暮なこと言わないの」

「そうよ、どうせ私たちはいつも一緒じゃない」

「お父さまとお母さまとも一緒よ」

「当たり前じゃない」

「お姉さまも来たら良かったのに」

「ねぇ」

「ホント、ホント!」

「でもお姉さまはいつも一人だわ」

「本当のお母さまとお別れになられたんですもの、仕方ないわ」

「いつも寂しそうだわ」

「いつもひとりですもの」

「かわいそうなお姉さま」

「お姉さまを見ていると私思い出すことがあるの」

「私も」

「私もよ」

「キアラお姉さまと会う前に離れてしまったもうひとりのお姉さま」

「どうされているのかしら」

「お元気かしら」

「それとも」

「それとも」

「それとも」



「まだ、戦っていらっしゃるのかもね」


「そうかもね」


「きっとそうよ」


クローンの少女たちはシンクロしながら浜辺で会話を楽しんでいた


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