
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第3章 グリメット城
格納庫の通用口の扉が開くと中から多くの子どもたちが出てきた
“うわっ! あいつらまだ居たのかッ!?
いったい何人いるんだ??”
少女たちの後から大人の男性陣が10人ほど続いた
整備兵やパイロットたちだろうか
“アリッサは当主が挨拶に来るって言ってたよな? てことは敵の軍隊の司令官だよな?
どんなジジイか知らないが、隙は見せられねぇ!”
ラーズは思わず身構えた
ブルガリアのコートガード基地の司令官は太ったジジイだ
ラーズたち新人のパイロットに直接話すことも無い
なのに敵の司令官が連邦のいちパイロットの俺に挨拶ぅ??とラーズは疑心暗鬼になっていた
それらしい恰幅の良い軍服の人間など見かけない
みな作業着のように思えるので格納庫のスタッフたちだろう
デッキではシャトルから帰還した娘たちと母船に残っていた娘たちが合流して抱き合ったり、追いかけっこしたりして騒がしそうにしていた
数刻してシャトルに数人が乗り込んてくる音が聞こえた
アリッサと、先程の作業着の男
整備長か?と思っていたらアリッサから信じられない言葉をかけられた
「お待たせラーズ君、こちらがグリメット家の副当主でグリメット城の司令官、スティーブ・グリメット様です」
ラーズは連邦軍の広報誌に掲載されていた写真でその男の顔を知っていた
イギリスのダブリンの街に落とされたコロニー落としの後、街を復興させたやりての貴族であり経営者スティーブ・グリメット
それがこの油まみれの作業着を着た男だと?
紹介された男、スティーブは深々と頭を下げ礼節を示した
「ラーズ・ローズだね!今日はうちの奥さんと娘たちを助けてくれて本当にありがとう!
本来ならボクが駆けつけなければいけなかったのにね!ちょっと私用でここを離れていたのでキミが助けてくれなかったらと思うとゾッとするよ、本当にありがとう!
キミはわが家族の命の恩人だよ!
グリメット家を代表して礼を言わせておくれ」
ラーズは拍子抜けした
この底抜けに明るいはなし口調の田舎の兄さんみたいな男が貴族? 当主?
ラーズは目をパチクリしながらも
「は、はじめまして!本日はお招きあずかりまして……!」
ラーズがごにょごにょと慣れない言葉を使ったのでスティーブはラーズの肩を笑顔でバンバン叩いたのだった…
