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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第3章 グリメット城


ラーズはスティーブ・グリメットのオフィスに通された
船内の通路は普通の艦船で良くみかける無機質なパイプだらけなものだったがオフィスの中は古めかしいお屋敷の中のような調度品だらけであった


クラシカルな雰囲気にラーズは圧倒されてしまい、ぁあ本当に身分の高い人の世界を覗いているのだと思えてきた


「着替えてくるからラーズ君はお茶でも楽しんでおいてくれ給え! いや、珈琲のほうが良かったかな?」


スティーブはアリッサに任せて部屋を出ていった


「ラーズ君、賢まらなくていいのよ?スティーブは重苦しい貴族の世界が嫌で当主の座を降りたみたいなものだから、紅茶でいい?」


アリッサは大きな机に備えられた通信機で飲み物を依頼してくれた


「アリッサ……さん、俺なんかをこんなところまで招き入れて何の用なんだ?」


アリッサは“さん”付けで呼ばれたことが可笑しかった


「今更なによ、アリッサでいいわよ
 スティーブはとても家族想いの人間なの
 その家族を救ってくれた人には感謝したいのよ、それが普段敵対する連邦軍であってもね」


「そんなもんかね? 俺にはわからないな!
 撃たれてもおかしくないし、逆の立場なら俺は敵を撃つぜ?」


「それでいいんじゃない?此処から離れたらまた私たちは敵同士、戦場でならお互い容赦しないものよ」


ラーズは“えらく簡単に言うんだな”と思った


「俺がここに潜入して破壊活動を起こすかもしれないぜ? そうなったら妻のアンタや娘たちに危害を加えてしまうかもな?
 それでもそんな悠長なこと言ってられるのか?」


アリッサはラーズが腰掛けたソファーの対面に座った


「私たちを助けてくれたラーズ・ローズは私たちにそんな事をするような人じゃないわ」


笑顔でラーズに語りかけるアリッサを見て、
“会ってまだ数時間しか経っていないのによくそこまで思い込めるもんだ”
と呆れた


ドアがノックされると紅茶を乗せたトレイを持った女性が現れた
いや、子供だ
彼らの娘のうちのひとりだろう
彼女はラーズには視線は合わさず、淡々とテーブルに紅茶のセットを並べていく


“さっきまで小さな子供のようにはしゃいで走りまくっていたくせに、いやに落ち着いてるな
 これが上流階級のたしなみってやつかい?”

ラーズは怪訝な表情を浮かべた


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