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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第3章 グリメット城


ティーカップにお湯だけを注ぎ、カップを温めているあいだに茶葉をポットに入れて布を被せ蒸していく


“紅茶を飲むだけなのにえらく手間暇かけるんだな?イギリス人はみんなこうなのかね?”


数分間待たされてようやく注いてくれたお茶はたしかに美味しかった
今まで紅茶を飲んで美味いと思ったことは無かったが初めて美味いと思った


アリッサもカップに口を付けたときにようやく着替え終わったスティーブが入室してきた
彼はスーツ姿で登場し、まさに英国紳士のような風貌となった


「いやぁお待たせ! お茶はどうかな?
 イギリスでは手に入らない品種なのでいつもブルガリアやトルコまで買い付けに来てるんですよ! 口に合ったらいいなぁ!」


スティーブは相変わらずハイテンションでニコニコしながら話し掛けてくるのでラーズは圧倒されっぱなしだ


「さてさて、僕の家族を救ってくれたラーズ君に色々と手助けしたくてね、こんな所まで来てもらったんだけど!
 君の乗っていた機体、モビルスーツをうちの娘が勝手に拝借しちゃっただろう?
 君には色々と迷惑をかけたね!
 妻によるとまだ司令部には報告されてないらしいじゃないか!
 何とか機体を回収して君のもとに戻してあげるのが筋だと思ってるんだ」


「〈ゾーナタ部隊〉もここと同じような空飛ぶ要塞ですよ?侵入できるような場所じゃない
 それに部隊が違うとは言え向こうも連邦軍の一翼だ、そう簡単に話しが通じるものですか?」


「そこなんだよね、わがグリメット家はイギリスの復興から財を為した、言わば成り上がり貴族でね、後ろ盾が少ない分企業連合軍に加盟して〈トランキュリティ軍〉の一端となっているんだが、確かにこれまでに私の部隊は何度も連邦軍と衝突しています
 グリメット軍が連邦軍のゾーナタ部隊に声がけしても勘繰られるばかりでなかなか話しが進展しないでしょう

 正直に言うとラーズ君の機体を回収させてあげたい気持ちよりも、向こうの手に渡ってしまった娘を取り戻したい、というのが私のホンネだよ」


「だろうね」


「私は娘を取り戻したい、君は機体を取り戻したい、同じ目的で我々は動けるんじゃないかと思うんだ」


「それは良いけど、何も手が無いだろう?
 俺に何がな出来る?」


ラーズは賢まった口調は捨てて対等の立場をアピールしていた


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