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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第4章 増援部隊ゾーナタ


黒海西南側の海岸線はトルコとブルガリアにまたがっている

黒海から地中海に抜けるボスポラス海峡が経済的にも戦略的にも重要な要所であり黒海警備隊〈ゼントリックス軍〉はとても大きな力を持っている


ブルガリア側のコートガード基地は地球連邦軍でありながらその軍事力には抗えないのが実情だ


大掛かりな軍事演習を繰り返す〈ゼントリックス軍〉を牽制するため北欧から派遣されたのが連邦空軍の一部隊〈ゾーナタ部隊〉である


グリメット軍同様に中級サイズのガルダ型輸送機フェニックス級〈ゾーナタ〉を母艦に3機編成で黒海に張り付いていた


トルコとブルガリアの国境近くで武力衝突があって数時間後、〈ゾーナタ〉はブルガリア側の空域を飛行していた


そこにはラーズの機体であったジムⅢがスティーブ家のシュメッターリングの娘のひとりを乗せたまま収容されていた


「おおい、ジョン! ジョン・リアリティ!?
 お前さんが連れてきちまったモビルスーツまだパイロットが出てこないんだよ!
 何とかしてくれよ!? 他の機体の整備が終わらないじゃねぇか!?」


白髪の老整備士から声を掛けられたジョン・リアリティはパイロットスーツもまだ脱いでいないのに呼び止められて苛々していた


「なんだよ、まだ出てこないんですか?
 しょうがないなぁ、ボクだって連れてきたかったわけじゃないんだけどなぁ……
 おおい、出て来いよぉ!!
 同じ連邦軍同士じゃないかぁ!?」


コックピットへ伸びるタラップからジョンが声をかける

ジョンはまだ入隊して間がない新兵なので古いメカニッククルーから目をつけられたくなかった

確かに戦場で拾ってしまったものの母艦の作戦司令からの撤退命令があったとき、そのまま一旦連れたまま戻って来いと言われただけなのだ


「こんなことなら拾ってくるんじゃなかったなぁ〜」


するとタラップの下からジョンを見上げるように同僚パイロットのヘンリック・カールソンが声を掛けてきた


「そう言うなよジョン! お前だって見てただろう? あの凄い空中戦を! あんな高度でエネルギー切れ起こしたエースパイロットを放おってはおけないだろう?」


「……確かにそうだけどさぁ……」


ジョンは戦場での光景を思い出していた

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