
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第4章 増援部隊ゾーナタ
シャワールームで汗を流し終えたジョンはTシャツシャツ姿のラフな格好になって格納庫に戻ってきていた
格納庫の一番隅のハンガーに追いやられたジムⅢには数人のメカニックマンが作業をしていた
通路で皆を仕切っていた老整備士のチーフ、ニルス・ノルバーグはジョンを見つけるとぶっきらぼうに話しかけてきた
「よぉ、少年!今日はあがりか?
うちの若いモンにも勉強がてらモビルスーツに触れさせてやりたくてな、毎日フリューゲルタイプばかりいじってたら技術が上がらないだろ?」
ジムⅢのほうを見ると確かに数人のメカニックマンは皆若い連中だ
別にボクなんかに言い訳しなくてもいいのにな、と思いながらジムⅢのほうへ歩いていった
「ああ、そうだ!ニルスチーフ!あの女の子は?」
「作戦司令たちが連れていっちまったよ、
機体のアクセスコードは連邦軍のブルガリアコートガード基地所属ラース・ローズになっていたがあの子どもが本人なのかどうかはわからん、
指令たちはそれを聞き取りしてるんだろうよ」
ジョンはニルスから離れてジムⅢのコックピットに近づいた
「やぁ、マティアス!モビルスーツを触るの初めてじゃないんだろう?どんな感じだい?」
ジョン・リアリティに話しかけられた若い整備士マティアス・ベルンハドソンはケーブルだらけの検査機を見つめながら振り返りもせずに答える
「ジョン!余計な仕事を増やすなよ!
アンタが拾ってきたコイツのせいで俺は残業なんだぜ?
それにモビルスーツの整備は入りたての頃に触ったっきりで慣れてないんだ、こんど酒を奢ってもらうからな!」
「見たところ損傷してないようだけど?」
「被弾してないだけで各関節のモーターは焼き付き寸前さ!一度の出撃でここまで摩耗させられるのが信じられないよ!
それも子供がだろ!?
ガキのオモチャじゃねぇっつーの!」
やはり空戦となったのは偶然か、ジョンはもしかしたら空戦専用機なのかと思ったが、どうやら考えすぎのようだ
「治すのか? うちで」
「さてね、今は状況確認って段階だ、見積もりみたいな仕事さ!
同じ連邦軍ったって部隊が違うし、勝手にはいじれないだろ?
せめてパイロットの要望があればともかく」
ジョンも頷いた
あの子供の正体がわからぬままでは整備も身動きが取れなさそうだった
