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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第4章 増援部隊ゾーナタ


「……ところで、
 ヨハネス、例の子供はどうするんだ?
 今は医務室で検査をさせているがこのままにはしておけないだろう?
 地上基地に連絡を取っては?」


ヨハネス司令に声を掛けたのは部隊長のうちのひとりフレドリック・マンベルグだ
彼は役職では格下だが長くヨハネスと戦場に組んだ旧知の仲で唯一司令と同格の話し方をしている

その話し口調はヨハネス本人は気にしていなかったが歳上のマイケル艦長は気に入らなかった


「わきまえろ、フレドリック!もう彼は司令なのだ、お前の戦友ではない」


「まぁまぁ艦長、そうそうあの子供を何とかしないとな
 ん? そこに居てるのはジョンだね
 ジョン、お前が連れてきたんだ、キミが面倒をみろ」


ヨハネスは離れた位置に座っていた実弟を見つけて声を掛けた


「えっ!? 兄さん、それは無いよ!
 俺は子守なんて御免だ」


「おい、みんなの前では司令と言え、何度言ったらわかるんだ?
 なぁに、戦闘が始まる前にシャトルで地上に下ろすさ、それまで面倒をみろと言ってるだけだ
 頼んだよ、ジョン?」


するとマイケル艦長のインカムが光り、耳元のイヤフォンから何なら声が漏れてくる
ブリッジからの通信が入ったようだ


「司令、その噂の子供の件で外部から通信が入ってきたそうです、ブリッジへ戻りましょう」


「艦長、地上基地からかい?」


「いえ、それがどうやら味方ではなく“トランキュリティ軍勢”らしくて……
 相手は“グリメット”と名乗っておるそうです」


若い司令は歳上の部下の顔を見つめた


「……グリメットと言ったかい?」


司令の問いかけにマイケル艦長は黙って頷いた


マイケル艦長とヨハネス司令は慌てて席を立った

残っていた部隊長たちがジョンのほうに振り向きながら嫌味を言ってきた

「おい、ジョン!お兄さんの仕事を増やすなよ
 お前も知ってるだろう?
 グリメットと言えば英国エリアでは幅を効かせた軍隊だぞ?」


「し、知りませんよ!」


ジョンは自分の手には負えない大きな波に呑み込まれようとするのを感じていた


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