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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第1章 サニービーチ

夕方、10人の娘たちは母親アリッサとともにネセバルの街へ繰り出していた


洋服を選び、帽子を被ってはきゃあきゃあと嬌声を上げながらリゾート地でのショッピングを楽しんでいる


その頃父親スティーブ・グリメットは自社の警護部隊を率いてブルガリア共和国の首都ソフィアに招かれていた


「ようこそ、ミスターグリメット!」


出迎えたのはロシア系の大柄な男


「いつも有益な情報をありがとうございます、アレクシス・ワイセンベルク男爵」


「堅苦しいのはここまでにしましょう、私のことはアレックスと」

「ではスティーブと呼んでください」


「スティーブ、今回の依頼は少々厄介ですな」


「いつもご迷惑をお掛けしておりますアレックス、で?どうでしょう?」


「ロストチャイルド〈失われた子供〉を探し出すのは容易なことではありません、それに、その子どもの最後の姿はとても耐えられないことが多い」


「覚悟の上ですよ、アレックス
私は残された子どもたちのためにも是非その子供も救ってあげたいのです」


「わかりますよ、スティーブ
私も父親です、ボンクラの息子がマフィアの使いっぱしりの仕事をしていますが、それでも私は家族を愛しています」


「ジャンは良く働いてくれていますよ」


息子の名前を出してもらい、マフィア上がりの男爵は笑顔になった


爵位を持っていても所詮成り上がり者

金で得た地位なのだから


「例のロストチャイルドは確かに生きています、このブルガリアの土地で」


「本当ですか?信じられない!」


「喜ぶのはまだ早いですよスティーブ、問題はここからです、ここからほど近いトルコの辺境の軍隊を知っているでしょう?」


「もしや、ハルフォード提督の部隊の?それは困ったな」


「スティーブ、あなたも企業連合トランキュリティ軍の一派でしょうが、所詮は寄せ集め、横の繋がりはありますまい、あそこは厄介なのです」


「北の塔に閉じこめられた姫だな、こりゃ」


「提督は手放さないでしょう」


「でしょうね」


スティーブ・グリメットは深いため息をついた


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