
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第4章 増援部隊ゾーナタ
「モビルスーツのアクセスコードは“ラーズ・ローズ”となっていたが、本人じゃないよな?」
「フレドリックさん、でも信じ難いことに彼女の機体が敵機を撃墜してたんですよ?
それも何機も……、
パワーダウンして無防備になった場面でボクが拾ってきたので彼女が戦闘を行ったことは間違いないです、この目で見ましたから!」
「……それは俺もお前の機体のカメラを見たよ
それでも俺には信じられなくてな
だってそうだろう?これまで戦場で長い事生き抜いてきた俺が馬鹿みたいに思える!」
「ヴィクトリアさん、それで例の子は?
隣の部屋ですか?」
「いえ、たいした怪我も無いから食堂のほうへ行かせたわ、看護師のひとりが以前プライマリースクールで働いていて子供慣れしてるから」
「んん? 俺達は食堂から来たんだぜ?」
「!」
ジョンはすぐに何かを察知して医務室を飛び出した
フレドリックもそれに続く
医務室のある居住ブロックから各職域ブロックへのルートは幾つもある
その中で食堂へ行くルートも数パターンあるが最短なら二通りだ
彼らは来たルートと異なる方へ走っていた
「嫌な予感がします!」
「俺もだ!」
二人が息を切らせて全力疾走をして食堂に入ると若い看護師のメイヤが驚いた表情で彼らと鉢合わせした
「な、何ごとですかッ??」
「メイヤ、子供はッ?」
「ええッ!? あぁ、ローズちゃん?
彼女なら今さっきトイレに行きましたよ?
此処の隣の……、どうしたの?」
メイヤは勝手に“ローズ”と愛称をつけていた
ジョンは食堂を見回すと、周りには何人もの若いパイロットたちが談笑している
「よぉ、ジョン!何をやってんだよ?息きらせて!さっきお前が拾ってきた女の子見かけたぜ?なんなんだありゃ?お前の妹か?」
「バカッ!外部の人間だぞッ!?少しは警戒しろッ! フレドリックさん、此処は任せます!
ボクはハンガーを確認します!」
「ハンガー(格納庫)ッ!?
どうして??」
「脱走兵かも!」
そう言うとジョンは慌てて食堂を出ていってしまった……
