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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第5章 ハルフォード提督と5人の将軍

トルコ共和国、北西部バルキシェフ空軍基地

もともと正規の空軍の基地であったが現在はハルフォード提督率いる私設軍隊〈ゼントリックス〉が接収し使用していた


ジェフリー・カルバート副長は作戦終了後の帰路の途中がとても長く感じられた


もともと新機体〈クラング・サッドウィング〉のテスト飛行を繰り返していた時にスクランブルがかかった


巨大な飛行物体が大気圏から黒海の領空へ降りてきたのだ


駆けつけたジェフリーたち〈サッドウィング隊〉はそれが艦なのか巨大なモビルアーマーなのか区別できなかった


細長い鋭利な物体は百メートル以上もあり、さらには羽根もなくどうやって宙に浮いているのかわからない


問いかけにも応じず黒海の領空をただ浮いているだけの不気味な存在
果たして人が乗っているのかどうかさえわからなかった


まるで空飛ぶ幽霊船のようだ


ジェフリーたちの小隊が手を出しかねているところに部隊長の小隊が合流した


部隊長オーロラ・ニーシュラは美しい女性だ
新しい部隊が発足するとなってジェフリーがすくさま副長に選ばれたことはジェフリー本人も意外だ

派手な実績も作らず、どちらかと言えば地味な役割が多かったので他のパイロットたちのような派手さが自分には無かった

だが堅実な仕事ぶりがどこかで見られていたのかもしれない

オーロラ・ニーシュラという新しい上司ともそれまでに面識すら無かった
ジェフリーはただ“また女か”と思っただけだ

此処〈ゼントリックス軍〉はトルコ空軍から別に切り離された特殊部隊で実質ハルフォード提督による私設軍隊のようだった

その提督の下にはもともと4人の将軍が就いていたが、新しく5人目の将軍としてオーロラ・ニーシュラが選ばれたのだが、5人の将軍はすべて女性の部隊長であったのだ


当初下の階級のものからは提督がはべらかせるための女かと思われもしたが、提督には直属の近衛団が常にそばについており、それらは皆ゲイの男たちばかりであったので〈提督の女たち〉という噂はあっという間に消えていった


新しく上司となったオーロラは美しさが崩れることは無かったが、同時に隙も見せない鉄面皮のような女性であり、副長として就いたものの今ひとつ腹を割ったような関係では無かった

いや、それよりもこの人に副長など必要なのだろうかと疑問に思えるほど優秀な部隊長であった

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