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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第6章 接触


旗艦「グリメット城」に戻ってきた〈ビーネンシュトック〉は巨大さ故に格納庫には入らず母船から牽引されていた


簡易的なハシゴのようなタラップが伸びてくる


ハッチを開けてシートから腰を上げると強い風に煽られる

先にラーズがタラップの手すりに捕まり、後から少女も続く

そのとき強風で少女の身体がふわりと浮き上がるのを咄嗟にラーズが受け止めた


「おいっ!しっかり掴んでろっ!」

「あ、アリガト」


ラーズは少女の小さな身体を庇うようにしてタラップを進む

“改めて見るとまだまだ小さな子供じゃないか”


ラーズも若い兵士ではあるが、こんな子供を戦場に出そうとするスティーブや、その設計図とやらから少女たちを増産しようとする輩たちに胸糞が悪くなってきた


風に負けないように踏ん張るがラーズはともかく少女は踏ん張りきれない様子で危なっかしい


「ダメだ、お前は体重が軽すぎて飛ばされちまう!俺にしがみついてろ!俺が連れてってやるから!」


「………」


先程からなかなかうまく進めなかった少女はいつものような強気な言葉は発っさず、言われた通りラーズの身体にしがみついた


ラーズは飛ばされないよう確認してからゆっくりとタラップをする進んでいって格納庫まで戻っていった


格納庫には整備兵のマーティーやマーシャたちとともに司令官のスティーブも待ち構えていた


「どうだった、ラーズ君!空飛ぶ機体は?」


「それより搭乗口を何とかしてやれよ?
 アンタの娘がまたひとり飛んでいっちまいそうだったぜ?」


ラーズがヘルメットを脱いで遠くを見やると同情した少女の周りに姉妹たちが取り囲んでいた


「こちらの設備が整う前に機体を受領したんだよ、他に気になったことがあるかい?
 参考にさせてもらうよ?」


ラーズはスティーブとは目を合わせずに遠くで騒いている少女たちを見つめていた


「風に飛ばされちまうような子供を、戦場に出すような大人が何言ってんだよ」


不貞腐れたような態度をとるラーズにスティーブは苛立った様子も見せずに苦笑した


「キミがマトモな神経の兵士で嬉しいよ」


ふたりの会話が聞こえていたのか、同乗していたパイロットの少女もヘルメットを抱えてラーズに近づいて来て、ラーズの脚を思いっきり蹴り上げた


「い、痛えっ!なにすんだ!?」

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