
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第6章 接触
一時間後、ラーズは新型機の処女飛行に駆り出されていた
「……なんで俺がこんな事を…?」
ラーズは文句を言いながらコックピットに座り、機体を旋回させて飛んでいた
「いつまで文句を言ってるの!ここまできたのだから黙って協力しなさいよ!」
ラーズの後ろに座る少女がラーズを諭す
新型機〈ビーネンシュトック〉は前後にシートを配置させた複座式のフリューゲルだ
ずんぐりとした巨体は通常のフリューゲルの3倍くらいの大きさがあり、モビルアーマーとでも呼べそうな大きさだ
「おい!俺は飛ぶのは慣れてないんだ!さっさと終わらせてくれ!」
「うるさい、集中させろ!」
機体のコントロールを任されているラーズはモビルスーツのパイロットであり、空飛ぶ機動兵器フリューゲルシリーズを扱うのは初めてなのだ
「せめて空軍のパイロットに任せろよな!?」
ラーズが必死にグリップを握る
通信が入りスティーブ・グリメットの声が聞こえてきた
「ラーズ軍曹、まぁ文句を言わず協力してくれないか?娘とどこまでコンビネーションがとれるか興味深いんでね!
そろそろ始めようか?〈ビーネ〉を射出してごらん!」
「わかりました、お父さま!」
後部席の少女が合図とともに機体の後方から〈ビーネ〉と呼ばれるパーツを空中にばら撒いた
それらはぱらぱらと落ちていったあと自我を持ったように自力で飛び始め、〈ビーネンシュトック〉に続いてきた
まるで親について飛んでくる小鳥のようだ
ラーズもちらりと目をやる
“こんなにもたくさんの子機をこんな小さな子供ひとりがコントロールしているのか?”
ラーズは事前に説明を受けていたものの、とても信じられなかった
「ラーズ君、そろそろターゲットのダミーが見えてくるよ!〈ビーネ〉には気にせず本体から攻撃してみてくれたまえ!」
「了解」
ディスプレイにロックオンのマークが付いた瞬間にラーズはグリップの上のスイッチを押した
電磁砲〈ブリッツ〉!!
バリバリバリバリッッッ!!と雷のような激しい音がすると閃光が走った
ダミーに直撃するがダメージを受けてない
そこへ無数の〈ビーネ〉たちが群がった!
「いけっ!ビーネたち!」
少女の声とともに一斉攻撃が始まり、ダミーは煙を吹いて落下していった
