
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第6章 接触
グリメット親子、ホーンキスト艦長が退室してラーズはヨハネス司令と二人きりになった
ラーズは何か言われるのだろうなと勘ぐって身構えていた
「ラーズ君の意見を聞きたくてね、少し話がしたかったんだ
さっきキミが教えてくれたスティーブ・グリメットの件以外に付け加えておきたい事はあるかい? 本人の前では言いにくかった事があれば聞いておくよ?」
ラーズはそれだけでは無いのだろう、と怪しんだ
「……俺は一度敵地から戻ってきた立場ですからね、信用は低いのかもしれないけど……
彼の母船では拘束や洗脳、強要というのは無かったです! 逆に良い待遇を受けました
本人曰く、家族を助けてくれたから、との事でした
俺からすれば連邦軍兵士として一般市民を戦場から退避させただけなんですけどね
艦の中では自由に行き来が出来て、休む部屋だけでなく、格納庫での整備に加わったり、非番のクルーと話しをしたり、本当に自由でまったく制限されなかった
なんなら新型の機体のテスト飛行にも参加させてもらったぐらいだった
信じられないかもしれないけど、俺は捕虜ではなく“歓待”されたようです……」
ヨハネスはパァっと笑顔になってラーズの肩を叩いた
「なら良かった! キミがおこした行動が連邦軍兵士として良かったからスティーブはキミを受け入れたのだろう!
私もこの艦に弟が乗っているんだ
だが、どうだろう?
私の弟を敵が助けてくれたとしても、彼のような手厚い歓待が出来るだろうか?
そう考えると自分が浅い人間のように思えてきてしまうよ」
「そうですね、自分が彼の艦に行ったとき、クルーたちはとても人懐っこくて…、
自分が戦っている目的を見失ってしまいそうです
それに……、あの艦のクルーはあの娘を前向きに受け入れていました
自分は戦場に子供が居ることに違和感があって、つい彼に嫌なことを言ってしまいました」
「あの子供はいったい何なんだ?
戦闘記録には信じられない映像が残っているんだよ」
ラーズは少し押し黙ってしまった
自分が軽はずみに教えてしまってもいいのだろうか
その雰囲気を察したヨハネスは笑って
「いいよ、私が直接彼に聞いてみるから
それにしても、どうやらキミは彼の人柄に魅せられ始めているようだね」
ヨハネスはブリーフィングルームを後にした
