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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第7章 バルケシルの炎


ラーズはトルコの大都会、イスタンブールのフェリー乗り場にいた


軍服ではなく私服の軽装だとただの旅行客にしか見えない
ゾーナタから降りて単独行動とっているのはトルコの黒海警備軍の動きを探るためである
ブルガリアからほど近いイスタンブールはラーズも何度も来ていたので土地勘を買われて偵察にまわされていた


「ラーズ!疲れたよぉっ!アイス買ってよぉ!」


ラーズの遠く後ろにグリメットの娘ローズが座り込んでしまった
いつの間にかローズと呼ばれるようになってしまった少女だが、もともとはモビルスーツの認識コードがラーズ・ローズだったためゾーナタの連中が勘違いして彼女をローズと呼ぶようになった

本人も否定しないためローズ・グリメットと名乗ってラーズの偵察に同行していた


「トルコアイスなんて観光地で頼んだらめちゃくちゃ高いじゃねぇかッ!我慢しろ!」


ヨハネス司令からは男性ひとりでは怪しまれるため男女のペアを組むように指示を受けたのだが、ジェニファーに断られ渋々ローズ嬢を連れてまわっているのが今の状況だ


ローズはもともとの私服のワンピース姿なので見た目は若いカップルが観光地を散策しているように見えるだろう


ふたりはトラム(路面電車)に乗り込みイスタンブールの中心へ向かっていた


「ねぇねぇ、この先にアヤソフィアのブルーモスクって観光地があるらしいわよ?ちょっと寄り道してみない?」


「バカヤロー、イスラムのモスクに入るのにそんな格好で行けるわけないだろ!それに観光に来てるんじゃ無いんだぜ?」


外国人観光客と言えど宗教的施設に立ち寄るには女性の頭を隠すことが義務付けられていた


「じゃあさぁ、橋を渡って〈ガラダ塔〉は?」


ラーズは〈コイツ全然人の話しを聞いてないな〉と同行偵察のペアを組んだ事を今更ながらに後悔していた


トラムを降りて名物のスィミットと呼ばれる庶民的なパンを咥えながら公園のベンチに腰掛けていた


「ほら、あそこにスターバックスがあるわよ」


「わかったよ、買ってきてくれよ」


たしかにリング状のスィミットを頬張っていると口の中の水分が持っていかれてしまうラーズだった


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