メダイユ国物語
第2章 ラバーン王国のプリンセス
3
マレーナは侍女三人に守られながら居城の裏門をくぐり、無事に城内へ戻ることが出来た。城内では何人もの従事者が、慌ただしく行き来している。
「姫様、ご無事で」
年配の使用人が足を止めて最敬礼する。
「何があったの?」
「分かりません。街の方は大騒ぎのようですが……」
そんなやり取りをしていると、外の方からバリバリと地響きのような音が聞こえてきた。
マレーナは窓に駆け寄り、空を見上げた。巨大なプロペラを回転させることで浮遊する黒い乗物(ヘリコプターに近い航空機)が三機、上空からホバリングしながらゆっくりと降下してくるところだった。多くの兵士を長距離移動させるための軍用の輸送機である。現在の平和なメダイユ連邦の国々では、近年ほとんど利用されなくなった代物だ。
「何であんなものがこの城に? どこから来た何者なの?」
誰に訊くともなく、マレーナは口走る。
空を飛ぶ黒い乗物の行方を目で追うと、それらは城の敷地内の広大な庭園に着地した。と同時に鉄の扉が開き、中から剣や銃で武装した屈強の男たちが数十人単位で降りてきた。彼らの内の一部は、一目散に城中央の建物へと向かう。
――敵だ。
マレーナは直感した。でも何故? この惑星(ほし)では、長く続いた戦争がとっくの昔に終わり、それ以来どこの国でも争いごとは全くなかったはずである。いや、今はそんなことは二の次だ。
「お父様たちが……」
今のマレーナにとっては、両親の安否が心配でならなかった。胸騒ぎが収まらなかった。
(あいつらはきっと、国王である父の元へ向かう)
そう頭で考えるよりも先に、身体がいち早く動いていた。両親と自分の私室のある、城内で最も高い塔に足が向かっていた。
「姫様、そっちは危険です!」
グレンナは慌ててマレーナの腕を引いて彼女を止める。突然現れた招かれざる客たちが危険な存在であることを、グレンナも本能的に察知していた。
「離してグレンナ、お父様とお母様が心配です」
マレーナは侍女の腕を振り払おうとするが、彼女は力を緩めることなく
「ウェンツェル様より、姫様を安全な場所へご案内するようにと仰せつかりました」
これまでマレーナが見たこともない真剣な面持ちで、語気を強めた。
マレーナは侍女三人に守られながら居城の裏門をくぐり、無事に城内へ戻ることが出来た。城内では何人もの従事者が、慌ただしく行き来している。
「姫様、ご無事で」
年配の使用人が足を止めて最敬礼する。
「何があったの?」
「分かりません。街の方は大騒ぎのようですが……」
そんなやり取りをしていると、外の方からバリバリと地響きのような音が聞こえてきた。
マレーナは窓に駆け寄り、空を見上げた。巨大なプロペラを回転させることで浮遊する黒い乗物(ヘリコプターに近い航空機)が三機、上空からホバリングしながらゆっくりと降下してくるところだった。多くの兵士を長距離移動させるための軍用の輸送機である。現在の平和なメダイユ連邦の国々では、近年ほとんど利用されなくなった代物だ。
「何であんなものがこの城に? どこから来た何者なの?」
誰に訊くともなく、マレーナは口走る。
空を飛ぶ黒い乗物の行方を目で追うと、それらは城の敷地内の広大な庭園に着地した。と同時に鉄の扉が開き、中から剣や銃で武装した屈強の男たちが数十人単位で降りてきた。彼らの内の一部は、一目散に城中央の建物へと向かう。
――敵だ。
マレーナは直感した。でも何故? この惑星(ほし)では、長く続いた戦争がとっくの昔に終わり、それ以来どこの国でも争いごとは全くなかったはずである。いや、今はそんなことは二の次だ。
「お父様たちが……」
今のマレーナにとっては、両親の安否が心配でならなかった。胸騒ぎが収まらなかった。
(あいつらはきっと、国王である父の元へ向かう)
そう頭で考えるよりも先に、身体がいち早く動いていた。両親と自分の私室のある、城内で最も高い塔に足が向かっていた。
「姫様、そっちは危険です!」
グレンナは慌ててマレーナの腕を引いて彼女を止める。突然現れた招かれざる客たちが危険な存在であることを、グレンナも本能的に察知していた。
「離してグレンナ、お父様とお母様が心配です」
マレーナは侍女の腕を振り払おうとするが、彼女は力を緩めることなく
「ウェンツェル様より、姫様を安全な場所へご案内するようにと仰せつかりました」
これまでマレーナが見たこともない真剣な面持ちで、語気を強めた。