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メダイユ国物語

第2章 ラバーン王国のプリンセス

 二人のやり取りに、ファニータとパウラは震えて身を寄せ合うしかなかった。

「グレンナお願い! 行かせて!」

「いけません! ウェンツェル様たち近衛隊も護衛に向かっているはずです。今はお任せしましょう」

 説得を繰り返すグレンナ。だが、マレーナの懸念はやまない。

 王族の護衛を任務とする近衛隊『ランス騎士団』は確かに優秀だ。だが、それは相手――敵も同じ武装の場合に限って、である。ランス騎士団はその名のとおり、遥か昔の騎士を模した護衛隊であるため、武装は古来の剣や弓である。この惑星の国々で長く続いた戦争が終わり、既に百年近くが経っている。戦争当時に猛威を振るった銃器類を中心とした近代兵器の使用は、全く想定されていないのも事実だった。

 マレーナは思い出す。つい先ほど見た敵の一群が――恐らく、いや間違いなく敵なのだろう――手にしていたのは、紛れもなく戦争時代の武器だった。

(あの者たちと戦ったとしたら、近衛兵に勝ち目はない――)

 彼女の不安はますます募るばかりだった。

 だからと言って、いま両親の元へ向かったところで、もし敵に襲われているとしたら自分に何が出来るというのだろう? 武術については簡単な護身術程度の心得しかない、そんな自分に……。マレーナは考えを巡らせる。何かいい方法はないのだろうか。

「お願いよグレンナ、その手を離して……」

 こんな突然の危機的状況下で、何も思い付くわけもなかった。マレーナはただ、両親の元へ行きたいだけだった。最悪な場合――いや、本当ならこんなことは考えたくもないが――、このまま両親と永遠に会うことが出来なくなるとしたら……。仮に自分が生き延びたとしても、一生後悔するだろう。マレーナは涙が込み上げるのを抑えられなかった。

「お願い……お願いだから……」

 こんな姿を自分に仕える侍女に見せるのは、王女としては恥以外の何ものでもない。それでもマレーナは、恥も外聞もなく弱気な表情をグレンナに向けて懇願した。

「姫様……」

 自分が仕える主の姿に、グレンナの手から力が抜ける。

「――分かりました。ただし姫様、わたしたちもお供します」

 続けてそう言うと、彼女は年下の侍女二人に目を向けた。もし二人が怯えて動けないようであれば、二人を逃して自分ひとりでも王女の盾になる覚悟だった。

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