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メダイユ国物語

第2章 ラバーン王国のプリンセス

「……分かりました」

 マレーナは言いながら、背後の二人に顔を向ける。座り込んで抱き合うファニータとパウラは、ヨロヨロと立ち上がった。

「こちらへ」

 従者のひとりが、侍女を呼び寄せる。二人は怯えながら、数歩歩み出た。

 すぐさまもうひとりが近づき、男二人がかりで無遠慮に彼女らの身体を撫で回し始めた。

「ひっ……」

「い、いや……」

 侍女たちは思わず悲鳴にも似た声を漏らす。だが、逆らえば自分たちも殺されると思った彼女らは、男たちに身を委ねた。

「なっ――」

 マレーナは怒りの目を、側に立つオズベリヒに向けようとした。

(侍女のボディーチェックをするのなら、せめて女の従者を連れてくればいいものを――)

 彼にそう言ってやりたかった。だが、今ここで彼に歯向かうことは出来ない。彼女らをも失うことになるかも知れないからだ。

(ファニータ、パウラ……ごめんなさい。我慢してちょうだい)

 侍女への屈辱は、その主である自分への屈辱に等しい。マレーナは耐えるしかなかった。

 オズベリヒの従者の男たちは、卑しい目を向けることもなく、ただ黙々と二人の少女の身体をチェックする。両腕の袖、胸元から腹部、腰から脚と、上半身から下半身に掛け、服の上から、その下に何も隠し持っていないかを確認した。

 先ほど、あまりの恐怖に失禁したパウラのスカートは、排泄物でぐっしょりと濡れていたが、彼女を担当する男は全く意に介することなく、機械的にチェックを進めた。

「何も持っていません」

「こちらもです」

 侍女のボディーチェックを手早く終えると、二人の従者は揃って報告した。

「次は姫君の番です。続けろ」

 オズベリヒはマレーナに言うと、従者のひとりに指示を出した。

「はっ……いや、しかし……」

 王女のボディーチェックをしろとの命令に、従者の男はさすがに尻込みした。

「いいからやれ」

 男の主は冷ややかな目で指示を重ねた。

「はっ――ご無礼」

 男はオズベリヒに答えると、王女に向かって最敬礼して彼女の着衣に触れた。

(こんなことで、わたしは屈しない)

 そんな意思をオズベリヒに向けるように、マレーナは彼の目を鋭く見据えながら、見知らぬ男に身体を触れられる屈辱に耐え続けた。

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