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メダイユ国物語

第4章 非情な実験

 これでは話が進まない。オズベリヒはどうしても見せたい物があるらしい。仕方がない、話はその実験とやらを見てからにしよう――マレーナは諦め、ベンチに腰を下ろした。

 その直後、オズベリヒが連れて来た従者のひとりが、突然マレーナの肩を両腕で押さえ付けた。

「な、何をするの? 離しなさい!」

 屈強の男に力任せに押さえ付けられ、身動きが出来ない。するともうひとりがマレーナの正面に屈み込み、服の下から取り出した手枷と足枷を手早く彼女の手足に装着した。室内にジャラジャラと鎖の音が響く。オズベリヒの従者は手足の枷と繋がった鎖の反対側を、壁に設置された金属製の手摺に繋いだ。マレーナは完全に自由を奪われた。

「どういうことです? すぐにこれを外しなさい!」

 ジャラジャラ音を立てながら、彼女は声を荒らげる。

「しばしのご辛抱を。今からご覧にいれる実験が終わりましたら、自由にして差し上げます」

 オズベリヒは至って冷静に答えた。

 実験を見るだけなのに、なぜ手足の自由を奪われなければならないのか。マレーナには全く理解が及ばなかった。

「私が指示を出したら被検体を連れて来い」

 オズベリヒが従者のひとりに命じると、彼は一礼して部屋を出て行った。

「実験とは何です? ここで何をするの?」

 マレーナは同じ質問を繰り返した。オズベリヒは、今度ははぐらかすことなく説明を始めた。

「ドワモ・オーグ」

 と、彼は口にする。

「え?」

「ドワモ・オーグですよ。ご存知ではありませんか?」

 マレーナには聞き覚えのない言葉だった。彼女は無言で頷いた。

「やれやれ、仕方がありませんね。説明いたしましょう」

 オズベリヒは語った。


 ドワモ・オーグは、惑星オセリアスに生息する、二足歩行の生物だ。外見は人間のシルエットに近いがやや大型で、顔は獣のそれである。知能は人間ほどではないもののかなり高く、社会性を持った集団で生活している。凶暴な気性のため、かつては危険な生物として人間により大量に殺され、その数が減少した。だが、近年に入り保護対象とされてからは、彼らの生息する地域への立ち入りは禁止され、一部の研究者のみが彼らと接することを許されていた。

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