メダイユ国物語
第6章 小さな慰み者
1
翌朝、窓から差し込む暖かな陽の光の中で、マレーナは目覚めた。身体には毛布が掛けられている。確か昨晩はベッドに横たわってそのまま眠ってしまったはず――彼女は怪訝な面持ちで周囲を見回した。
「おはようございます、マレーナ様」
隣室の扉がノックされ、それと同時に扉の向こうから声が掛けられた。聞き慣れた声だ。
「――どうぞ。入って」
マレーナが答えるとすぐに扉が開き、小さな侍女が顔を覗かせた。
パウラは無事だった。マレーナは胸を撫で下ろした。
「パウラ、よかった……昨晩はどこへ行っていたのですか? 心配したのですよ?」
ベッドから起き上がり、マレーナはパウラの元へ歩み寄る。
「は、はい……お手伝いが要るとのことでしたので、そちらへ行っていました」
彼女は目を伏せて答えた。
「こちらへ戻って来たら、マレーナ様はすでにお休みでしたので、お声をお掛け出来ませんでした。ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした」
パウラはそう続けると、膝に両手を添えて深くお辞儀した。
「あなたが無事ならそれでいいの。でも――」
パウラの言葉に不審を抱いたマレーナは、体制を低くして目線を合わせ、両手を彼女の肩に置いた。
「手伝いって? あなたも兵士に連れて行かれたの? 何もされてないでしょうね?」
ファニータが兵士に連れ去られた時と同じ状況だ。パウラまでオズベリヒの実験に巻き込まれたのではないか、マレーナは咄嗟にそう考えた。
「あの……はい、兵隊の人に付いて行きました。でも……お部屋のお掃除や、お洗濯のお手伝いをしただけです」
王女の立て続けの質問に気圧(けお)されながら、小さな侍女は答えた。
「――そう、それだけなのね。よかった」
安堵したように、マレーナはパウラの顔を覗き込んだ。だが、彼女の表情は冴えない。顔色も悪いようだ。
「どうかしたのですか? 身体の具合が悪いのであれば、しばらく休んでもらって構いませんよ? それとも医務室へ行きますか?」
元気のないパウラを気遣うマレーナ。だが、パウラはぎこちない笑顔を主に向けながら、
「いえ……何でもございません。私は朝食のご用意をいたします」
そう答えると、その場から逃げるように部屋を出て行った。
翌朝、窓から差し込む暖かな陽の光の中で、マレーナは目覚めた。身体には毛布が掛けられている。確か昨晩はベッドに横たわってそのまま眠ってしまったはず――彼女は怪訝な面持ちで周囲を見回した。
「おはようございます、マレーナ様」
隣室の扉がノックされ、それと同時に扉の向こうから声が掛けられた。聞き慣れた声だ。
「――どうぞ。入って」
マレーナが答えるとすぐに扉が開き、小さな侍女が顔を覗かせた。
パウラは無事だった。マレーナは胸を撫で下ろした。
「パウラ、よかった……昨晩はどこへ行っていたのですか? 心配したのですよ?」
ベッドから起き上がり、マレーナはパウラの元へ歩み寄る。
「は、はい……お手伝いが要るとのことでしたので、そちらへ行っていました」
彼女は目を伏せて答えた。
「こちらへ戻って来たら、マレーナ様はすでにお休みでしたので、お声をお掛け出来ませんでした。ご心配をお掛けして申し訳ございませんでした」
パウラはそう続けると、膝に両手を添えて深くお辞儀した。
「あなたが無事ならそれでいいの。でも――」
パウラの言葉に不審を抱いたマレーナは、体制を低くして目線を合わせ、両手を彼女の肩に置いた。
「手伝いって? あなたも兵士に連れて行かれたの? 何もされてないでしょうね?」
ファニータが兵士に連れ去られた時と同じ状況だ。パウラまでオズベリヒの実験に巻き込まれたのではないか、マレーナは咄嗟にそう考えた。
「あの……はい、兵隊の人に付いて行きました。でも……お部屋のお掃除や、お洗濯のお手伝いをしただけです」
王女の立て続けの質問に気圧(けお)されながら、小さな侍女は答えた。
「――そう、それだけなのね。よかった」
安堵したように、マレーナはパウラの顔を覗き込んだ。だが、彼女の表情は冴えない。顔色も悪いようだ。
「どうかしたのですか? 身体の具合が悪いのであれば、しばらく休んでもらって構いませんよ? それとも医務室へ行きますか?」
元気のないパウラを気遣うマレーナ。だが、パウラはぎこちない笑顔を主に向けながら、
「いえ……何でもございません。私は朝食のご用意をいたします」
そう答えると、その場から逃げるように部屋を出て行った。