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メダイユ国物語

第6章 小さな慰み者

「はい、では私はこれで失礼して……」

 パウラは別室の、使用人が使う浴室へ向かおうとするが、マレーナは意外な言葉を彼女に投げかけた。

「いいえ、今夜あなたはこちらの浴室を使うのよ?」

 と、王女はこの自室から行き来できる浴室への扉を指し示した。

「これからわたしと一緒にね」

「え?」

 パウラには一瞬、王女が何を言っているのか理解出来なかった。

「こちらの浴室で、わたしと一緒にお風呂に入りましょう?」

「とんでもございません! 使用人の私が、姫様と入浴だなんて……」

 恐縮するパウラ。

「いいパウラ? わたしとあなたは、今は同じ囚われの身なのですよ?」

「ですが……」

「わたしを守るため身を犠牲にしているあなたに、せめて今わたしに出来ることだけでも、させてちょうだい」

 笑顔を保っていたマレーナではあったが、次第にその表情は悲しげな物に代わっていた。

「分かりました。マレーナ様」

 王女を悲しませたくない――そんな一心で、パウラは王女の願いを聞き入れることにした。

「それじゃあ、着替えを取っていらっしゃい?」

「はい!」

 マレーナは再び笑顔を見せ、隣室に向かう侍女を見送った。

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