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人造人間フランくん

第3章 嫉妬心、芽生える。

鍵を掛けられた部屋の中で、白はフランに見つめられて硬直していた。フランは従順で優しく、自分を傷付けることはない人造人間の筈だ。そんな彼が今、自分を部屋の中に閉じ込めたまま怒りの表情で彼女を見ている。荷物は無事な物の、荷物を入れていた段ボール箱はフランの手の中でくしゃりと潰れていた。フランが怒っていることは明白である。
「なん、で。フラン、お前が、私を、怒る理由が」
「怒る理由が分からないと、そうおっしゃるのですか。私がどれほど、貴方を心配しているのかも知ってはくださらないのですか」
フランはそう言うと、酷く苦しそうな表情をした。今までに見たことのない、怒りと悲しみの表情に白は困惑する。そして彼女はフランの本心が分からないままに、恐怖心を気付かれないようにとフランに八つ当たりをする。
「お前に私の行動を制限する権利はない! お前は私が作った人造人間、私の為に存在する人造人間なのだ! お前は私が『やれ』と言ったことだけをやれば良いんだ!」
「……承知しました、Dr.シュガー。ですが、貴方にも私の行動を制限できる権利はない筈です。例え貴方に造られたとして、私は貴方の所有物ではない。私は一人の命を持った、れっきとした人間なのですから」
フランの言葉に白の言葉は喉につっかえ、そのまま彼女は不機嫌な表情を見せて部屋を出て行ったが、フランが研究室へ向かう白を押し留めることはなかった。
(その権利は、私には有り得ないのだから)
「畜生、畜生! あいつは私が作った、私を絶対に裏切らない人造人間であったはずなのに! どこで間違えた、何処で失敗した!? あいつが私を叱りつけるなんて、あいつが私を疎ましく思うなんて……」
そこまで口にして、白は自分の言葉にハッとした。これではまるで、自分がフランに愛されることを望んでいるようではないか。そんなことを望んではいけないのに。白は悔しさに唇を噛み、涙を零さぬように耐えた。
「私はお前のことなど、何とも思ってはいない。私は人に愛されることなど、望んではいけないんだ」
白はそう思いながら、けれどもその体に残った熱を感じていた。フランに見つめられた顔が熱く、そしてその熱は徐々に体を伝っていくようだった。白はその熱を隠したまま、実験室から自室へと姿を隠した。

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