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時給制ラヴァーズ

第1章 1.冗談ではないらしい


「おおお、ペントハウスかっけー!」

 そしてそれぞれの授業終わりに待ち合わせ、俺はさっそく樫間くんの家を訪れていた。
 持ち家というか所有物であるマンションは、四階建ての小奇麗なもので、オフホワイトのタイルがオシャレな外観だった。
 本人が言った通り主に学生向けのマンションらしいけど、セキュリティはしっかりしているし玄関ホールも綺麗で基本的にいつも満室らしい。いいところは早いうちに埋まるだろうから、それも頷ける。

 その屋上にもう一部屋作られていて、そこが大家である樫間くんの家だった。ペントハウスが家とか、どれだけモテスキルを持ってるんだこの人。
 同い年だというのに、俺が勝てる要素なんて身長くらいしかない。それもほんの少しの差だから誇るものでもないのが悲しいところ。

「ここが、家。とりあえずここに住んでる体を保ってくれればいいから、部屋の方も案内……」
「え、なんで? 居候させてくれるんでしょ?」
「いいのか? それで」
「ここに住ませてくれるならそれでいいよ。部屋が空いてるなら、俺に使わせるより誰かにちゃんと貸した方が損ないし。なにより同居すれば家賃いらないんでしょ? どう考えてもこっちの方がいい」
「でも、大丈夫か? 俺のことだって、よく知らないのに」
「時給のいい住み込みのバイトって考えれば好条件すぎるよ。それに俺、人見知りしないんだ」

 自分で言ったくせに俺が提案に乗ったことにびっくりしてる樫間くん。いい部屋を借りられるのはもちろんありがたいけど、それだったら断然タダの方がいいに決まってる。タダより怖いものはないと言っても、やっぱり家賃なしは魅力的だ。それにどうせ恋人設定にするなら、とことんやっちゃった方がいいだろう。
 あまたある結婚の誘いを断るためには、同棲する恋人という設定の方が武器になるはずだ。

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