時給制ラヴァーズ
第1章 1.冗談ではないらしい
「あ、とーどー! なあ藤堂! お前確かバイト探してるっつってたよな? それまだ決まってないか?」
それはある日の昼のこと。
友達の城野が出会い頭にそんな話を持ちかけてきて、すべての意識がその言葉に集中する。
「もしかしたら部屋の問題もなんとかなるかもしれねーけど、どうする? 聞く?」
「なにそれすぐ紹介して。誰よりも早く。今すぐに」
どうするもなにもない。今俺は、あまりにも好都合すぎる条件を怪しむよりも、素晴らしき提案を持ってきてくれた友情を信じたい状況に置かれている。
そのオイシイ話がなくなる前にと、俺は城野の腕を掴んでまっすぐと見据えた上で真摯な瞳で先を促した。
あまりのがっつき具合に若干うろたえたものの、城野が話し出したそれが、俺にとってすべての始まりだった。