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時給制ラヴァーズ

第2章 2.急ごしらえのコイビト

「でも、じゃあやっぱりこれはいるよね。初めてなんだったら、色々必要なものがあるだろうし、ラブラブ設定ならきっと興味津々で買っちゃったりするんじゃない? あ、じゃあこっちの、なんかいっぱい機能ついてるのにする? それともこっちの鈍器みたいなやつ? せっかくだからなんかゴージャズそうなこれとか」
「……お前はまだ理解出来てないと思うけど、一応人に見られる可能性のあるものだってことをわかっといてくれよ? これを使ってるカップルのふりをするんだからな?」
「あ、そうだった。あーそっか。これ俺が使われてる設定なのか」
「そう。あの二人、平気でこういうの漁るからな」
「そういう風に見られると思うと、もうちょっとソフトなものの方がいいかもなぁ……」

 親が息子の夜の事情まで探るとは思えないけど、慶人が言うんだから用意はしておいた方がいいんだろう。でもそうなると、興味本位だけで買い揃えるのはリスクが大きいかもしれない。
 俺が抱かれる方って設定なら、これをすべて自分に使われてるって見られるんだ。こんなエグイもので楽しんでいるカップルに見られるとか、ちょっとハードル高すぎる。アブノーマルさで興味を引きたいわけじゃない。
 一時の盛り上がりでとんでもない設定を盛り込むところだったと反省して、少しばかり落ち着いて初心者向けのものを選んでカートにイン。

 それでもやっぱり未知の世界に上がったテンションは下がり切らず。
 慶人は慶人で半ばやけ気味に、結局あれもこれもと無駄に買い込んで、人には言えない買い物を終わらせた。
 本物を手に取って選んだわけでもないのにぐったりと疲れていたのは、主に精神的疲労のせいだと思う……。

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