時給制ラヴァーズ
第3章 3.うそつきデートの行方
「なあ、天。明日の午後ってなんか予定あるか?」
そうやって慶人に声をかけられたのは、夕飯の後のんびりとテレビを見ている時だった。
慶人はなにか悩みがあったり聞きたいことがある時は特に表情が険しくて恐くなる。だからとてもわかりやすい。
「明日? 特にないけど」
明日は午後の一コマだけの授業が休講になると連絡が入っていて、それをさっき慶人にも話したところだ。
突然空いた時間だから特に用はないよと素直に告げると、頷いた慶人がなにかを掲げてみせる。
「バイトしないか?」
慶人が見せたのは立派な一眼レフのカメラ。それでピンと来た。
そうか。バイトだ。
「いいよ。どこ行く?」
「とにかくベタなデートスポット、がいいかな」
恋人としての証拠作りの案として、ラブラブデート写真を見える場所に飾ろうと話していたんだ。そのために必要なデート写真をまだ撮っていなかった。
一緒に住んでいるおかげで、ほんの少し前に知り合ったばかりという雰囲気はほとんどないと思う。
二人の思い出話も結構練ってはいるけれど、付き合っている証拠は少しでも多くあった方がいいだろう。今普通に写真を撮ったとしても、きっとただの友達にしか見えない。だからこそ、デートらしいデートの写真が必要なんだ。
だから出かけることは納得で了承。
けれどそれはそれとして、構えられたものに興味津々だ。