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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

「それ一眼レフ? デジカメ? 慶人、カメラ詳しいんだ?」
「俺程度で詳しいって言ったら、本当に詳しい人に怒られるよ」

 まだまだ勉強中、なんてはにかむ慶人は本当に謙虚だ。俺だったらそんなカメラを手に入れただけで舞い上がって自慢しちゃいそうなものなのに。

「んー、写真撮るならおめかししてかなきゃね。どこ行く? ベタなとこだったら……遊園地とか?」
「そうだな。どこがいいか検索して……って、おめかしってなんだよ。今時、おめかしってお前ほんっと変な奴」
「ウケ過ぎウケ過ぎ。いや、慶人? お腹抱えて笑うところじゃないよ?」
「いや、だって……はははっ、やばいお前、おめかしって……!」

 体を折り畳むようにして笑っている慶人は、完全にツボに入った様子。
 一緒に暮らすうちに、慶人がただのクールなイケメンじゃないってことに気づいた。そんな簡単な言葉で片付けるのはもったいない。
 今まで出会った誰とも違う生真面目な面白さを持っていて、それを知れたのはこうやって一緒に住んでいるのが大きいと思う。
 優しい、シャイ、謙虚、照れ屋、そして笑うツボが変。
 一つ一つ新しい発見をするたび、慶人への興味がより深まるし、知れば知るほど単純に慶人という人が好きになる。

 ……ただ本人はその目つきの鋭さを気にしているようで、恐い顔になっていたら教えてくれと言われている。俺はそれも含めて魅力の一つだと思うんだけど。
 で、なにか考え事をするたび眉間のしわを含めて恐くなる顔を俺が指摘すると、眉間を指先で揉んでぎこちない笑顔を作る。
 そのあまりにも不自然な笑顔に俺が大笑いするたび、慶人はつられるように笑った。
 その顔が俺は好きで、だからこそもっと慶人が笑顔になれることがたくさんあったらいいのにと思っていた。

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