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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

 移動は慶人の車でドライブを兼ねて。
 これでもかという程モテスキルを発揮する慶人は、もしこの作戦が上手くいったらやっぱり普通に彼女とか作るんだろうか。それとも大学卒業するまでは静かに暮らしたいのかな。
 継続的に慶人の両親を騙し続けるなら俺が恋人だと思い込ませ続けなきゃいけないけど、普通は最初のカミングアウトで驚くだろうから、男同士のカップルのその後を熱心に追い続ける親はいないだろう。むしろ、そのことで気まずくなったり関係が悪くなったりはしないのだろうか。それぐらい距離を取りたいということなのか。

 慶人はどう思っているんだろう。そもそもこんな作戦、はいそうですかと信じられるんだろうか。まあ、信じ込ませるためにここまで色々やっているんだけど。
 なんにせよこの話が終わったら俺はあの家を出て行かなきゃいけない。時間が稼げたことをありがたいと思って、早めに新しい家を探さないといけないなと思う。なんせ慶人の家が居心地がいいから、ハードルが高くなって困る。

 そんなことをつらつらと考えながら、ギリギリ日が落ちるタイミングで辿り着いたのは海。ベタなデートスポット第二弾として二人で選んだのがそこだった。
 端に一台止まっているだけでいっぱいに見える小さな駐車場に車を停め、俺たちがまずしたのは服装と髪型を微妙に変えること。設定的にはさっきの遊園地と別日ってことだから、出来るだけ違う日の二人に見えないといけない。いっぱいデートに行っているんですよアピールだ。

 それを終えると、俺は車を飛び出し海へと走った。
 コンクリートのスロープを下るとすぐに砂浜になり、スピードが鈍る。
 それでも夕日が落ちきる前に写真を撮りたくて、ほんの数秒だけ慶人を待つと、そのまま波打ち際まで走った。

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