時給制ラヴァーズ
第6章 6.雷鳴はまだ遠く
「ねー城野」
そしてある日のお昼。学食でちょうど一緒になった城野が最近どうだと話を振って来てくれたので、ちょっとばかり話してみることにした。一人で悩んでいても答えなんか出ないし、こういう時に城野はいい相談相手だ。
でもそのままで相談は出来ないから、たとえで誤魔化すことにする。
「もしも俺と一緒にAVとか見たとするじゃん?」
「……なんだそのいきなりの前提」
「とりあえず聞いて。その内容が、城野のストライクゾーンどんぴしゃだったとします。で、どうしようもなくムラムラっときたとする」
「おう」
「そしたら一緒にいる俺で発散しようと思う?」
「…………はあ?」
間を置いてからの力一杯の聞き返しは、それだけで答えを言っているようなものだ。
思いっきり眉をひそめた表情からもはっきりわかるけど、せっかくだからちゃんと聞いてみようと思う。
「ちょうどそこに俺がいたら、俺を使おうと思う?」
「ねぇよ。なんだよそのたとえ。ねぇよ。どう間違ってもねぇよ、んなこと。あっても、一人でするからお前出てけぐらいだろ。か、トイレ行く。なんにせよ、それは、ねぇ」
早口でまくしたてられた上に本気で呆れ切った顔をされたものだから、どうしたものかと頬杖をつく。
当然俺だってそれが普通だってわかっているのに、ここまで全力で否定されるとそれはそれで微妙に思ってしまっている自分がいる。それがどうにも納得いかない。