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ミニチュア・ガーデン

第4章 幸せへの崩壊

 どれほど月日が流れたのか。
 霞に支配された時間が長かったせいか、同じ日常がめまぐるしく回り、眩しい輝きを放って息をつく暇もない高揚感に、胸の空洞は小さくなっていた。
 言ってしまえば世界は相変わらずだった。
 政治家は目先と未来の金と権力に奔走し、マスコミは重箱の隅を突き、底辺が喘いでいる横で多少裕福で使えない層が甘い汁を吸う。何年経とうが変わらなかった。
 ガルクはそんな物はどうでもよく、貧しい人々に彼の影を求め、クウラに彼の肌と面影を求めた。漫然と安穏の中に居たが、ふと、ある事を思いつく。

「王制制度はもう古い。この国を変えるならば、国のトップを変えなければいけない」
 誰かがそんな迂闊な事を口にし、ガルクはほくそ笑んだ。
 もう、仕事などどうでも良かったのだ。今の彼が欲しかったのは、甘い逃避にどっぷりと浸かる時間。それは、王と言う立場では限られており、心の何処かで誰かが言ってくれる事を待っていた。
「私が王位を退いて、国を導いてくれるのならば、そうしよう。私が王として未熟だから国が豊かにならないというのならば、喜んで退こう。それが、民の為になるならば」
 ガルクはそう煽った。

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