
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
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季節は巡って、また秋が訪れた。
多忙な日々の合間にも、愛津は織葉と都合を合わせて、ランチやデートを楽しんで、時には泊まりがけで、蜜月を謳歌した。
一度好意を伝えてしまえば、特に何かががらりと変化したこともなかった。社内恋愛禁止の企業も、不可抗力のなすがままになった社員達が皆、掟破りを律儀に告白するはずがない。本人達の意図しないところでそれが暴かれるのも、ごく一部だろう。愛津と織葉の関係も、誰かが察する様子はなかった。それでなくても季節が巡って秋を迎えた最近は、行く先々で選挙戦の話題が盛り上がっている。えれんの勝利は確実だが、当然、楽に構えようというメンバーなど「清愛の輪」には一人もいない。愛津達も私的な問題は二の次で、その時に向けての準備も入念に進めていた。
「川名有弘と長沼そうま、組んだんだって。良い加減にして欲しい」
書類をまとめていた愛津の耳に、英真の煙たげな声が触れてきた。顔を上げると、例のごとく就業中の私語を日常としている令嬢が、もの凄く顔の格好良いパートナーに話題を振っていた。
