
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
それから昼休み、愛津は織葉と事務所を出た。
ビルのある住宅街から小路を抜ければ、駅への道はカフェもあって、賑やかだ。
その近辺へ向かいながら、愛津達は今朝の英真達の話題を思い出していた。
「自分本位じゃないかな。異性愛者の分が悪くなって、男性の立場が弱った途端に、被害者みたいに振る舞うなんて。昔のことは私もよく分からないけど、元はあの人達が加害側だったと、自覚しての行動なの?」
「自覚がないから、長沼さん達は英雄気取りなんだと思う。私達の変えてきたものを潰せば、彼らを支持しているような人達にとっては本意だから。と言っても、世のため人のためにって、あの辺の人達は真顔でやってるんだろうけど、川名さんに賛同している視聴者さん達くらいだと、単純に悪政を何とかしろって考えている程度かと」
「悪政なんて、酷い。それは、男性に人権がなくなったのは気の毒だけど、そうしなければ、きっとミスが繰り返され続けていた。治安の悪化、不況、財政難、国同士の衝突……。そういうことを防げた試しもないくせに、権力だけは握りたがってきたなんて、お灸を据えられて当たり前だよ」
害悪は男に限らない。
はりぼての、偏見に塗り固められた常識と呼ばれ出しただけの常識は、例えばえれんのかつての親友のように、一個人を殺すに至ったこともある。異性愛者達や男達も、苦しみもがき続けるべきだ。
