
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
「私も勝手だけどね。こんなに言って、ありあちゃんは釈放されたらって、願ってる。知り合いが収容されるって、──…」
精神的に堪える、と喉元まで出かけたのを飲み込んだ。
仮にも初恋相手が収容所にいる織葉を前に、この話題は不適切だ。
「こうきのこと、気にしてくれてる?」
「えっと、……」
「愛津ちゃんは優しいねー」
気まずさを持て余した愛津とはよそに、織葉はあっけらかんとしていた。
彼女が、愛津の手を取る。
「もし私が引きずってたとして、愛津ちゃんは妬いてくれる?」
「と、言うと?」
「あんな男より私に構って、って。初両想いの愛津ちゃんに言われたら、キュンとしそう」
「っ……」
こういう時、愛津は愛されている実感が湧く。同じ職場というだけでも、世間一般の恋人達に比べて、おそらく愛津達はより親密だ。
彼女との日々は、蜂蜜を濾過したようにただ甘い。何も考えなければきっと誰もが羨むほど幸せなのに、どこまで自惚れて構わないのか、どこまで織葉は愛津との距離を許しているか。焦がれる想いを募らせるほど、愛津は聞き分けの良い恋人であろうと、自分自身に歯止めをかける。
