
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
カフェに入って、今月もう何度目のオーダーになるか分からないほど気に入っているメニューを頼んで、愛津は織葉とランチを始めた。
共通の話題は尽きない。加えてまだ知らない互いの話を小出しにしながら箸を進めていると、一時間弱はあっと言う間だ。
午後の業務の開始時間直前に走り込む勢いでビルに戻って、人影のない暗い廊下で息を整えて、小鳥のような口づけを交わす。そうしてゆったり徒歩で帰ってきた風を気取って、えれん達の雑談の聞こえる扉を開く。
そうした平穏な日々は、一旦、秋の深まりの中で区切り目が入った。
前回、えれんが快挙を遂げた議員の選挙戦が近付いたのだ。
メディアは虚実に関わらず、あらゆる情報を売り物にして、人々の好奇心を満たして、候補者達の緊張を煽った。
「清愛の輪」も、張りつめた空気が漂った。相変わらず若い世代の女達や一部の男達に圧倒的支持を得ていたが、今後の明暗を分ける局面に立って、たかをくくれる有権者はまずいない。事務所下は選挙カーが通り過ぎることもなく、長沼も温厚な性格を主張する作戦に出たらしく、この時期だけは去勢された猫のようにおとなしくなった。
結果から言えば、十一月の最終週、えれんは二度目の当選を果たした。長沼も入選にしがみつき、任期中につき静観していた若松らからは、祝辞が届いた。
