
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
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落選した往国英治は、重度の浪費家だった。そのため私産もほぼ底をついていた彼が、配偶者に離縁及び慰謝料を求められているというニュースを受けて、英真は英治に連れられて、数年振りに母親の実家を訪った。
旧家と謳われるここは、住み心地は文句のつけどころがなかったにせよどこか傲岸な英真の実家とは違って、寧静な品位が潜んでいて、家政婦達の謙虚な気配りが行き届いている。華美な骨董が客間を装飾してもいなければ、広大な敷地を無駄に所有して豊かさを誇示してもいない邸宅は、のんびり暮らす祖父母と次女、それから彼らの使用人達が暮らしている。
往国家を飛び出してきた英真の母親の私室は、三十年前のまま維持されていた。議員の令閨であった頃からは一変して、娘と息子を迎えた彼女は、朗らかに生家を満悦していた。
祖母の知人の画家の手がけた水墨画が清涼な存在感を放つ居間で、英真ら兄妹は香ばしい茶葉のお茶を味いながら、久しい年長者達に各々の近況を報告した。
