
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
「英真、しづやちゃんとの結婚式は、もう一度挙げられないかしら。母親が娘の花嫁姿を見られなかったなんて、後悔してもしきれない」
「会わない内に立派になって……。英真、お父さんなんて気にしないで、私達には話してくれるべきだったわよ。本当におめでとう。今度、貴女の良い人も連れておいでなさい」
「英治は、災難だったわね。英真の手前、神倉さん達にあまり強くは言えないけれど、そのありあさんという方は、助けられないか私達も動いてみるわ。貴方も幸せにならないと」
「そうだぞ、英治。お前は茂樹くんと違って、賢い。あいつはもう少し有能だと思っていたが、失言はするわ、金を使い込むわ、愛人までこしらえていたそうじゃないか。あんなヤツがのうのうと生きて、お前のような良い子が損をする世の中など、あってはならん」
「おじいさん、大丈夫よ。往国さんは、それはもうお好きになさっていたけれど、今回の落選で、皆さんやウチの娘に見放されて、これから慰謝料も払わなければならないんだから、きっと地獄をご覧になるわ」
母親は、憑き物が落ちたようにおおらかな笑い声を立てていた。往国英治の旧時代的な思想や彼の親族達に感化されていただけで、彼女も生来、両親の柔軟さを引き継いでいたのかも知れない。
英治の顔は、安堵と苦渋が入り混じっていた。後者の原因は、やはりありあだ。その証拠に、祖父母らが各自の部屋に戻って夕餉までの空き時間、英真は兄の呼び出しを受けた。
