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ジェンダー・ギャップ革命

第7章 愛慾という桎梏


 
「ありあちゃんを訴訟したのは、英真じゃ……ないよな?」


 出来心が、英真の否定に制止をかけた。

 英治の仮定が的中していたとする。彼の英真を見る目が変わらないのは想像つくが、英真自身の一抹の悪意が、彼の苦悩を見たがった。


「だったら何」

「まさか……」

「こういう偏見は好きじゃなかったけど、異性を好きになる人って、どっか自己中なんだよね」

「英真、気を悪くしたならごめん」

「お兄ちゃんは、すぐ私の機嫌を取りたがる。そうやって物分りの良いつもりになるのも、思い上がってる自覚はないのかな。お父さんもお兄ちゃんも、玲亜も。私に求婚してきたお坊ちゃん達も。誰かを敵に回す勇気もないのに、望みだけは通したいんだね」

「…………」


 英治に他意はなかったはずだ。昔から他人想いで、特に英真には両親より目線を合わせて親身でいてくれた彼は、血縁者としてこれ以上にない存在だ。

 だが、英真は対処のしようのない苦しみを知った。
 親友だと信じた玲亜には疑惑をかけられて、今度は逆恨みの対象になった。淫らごとの共有がなくても友情を深めた彼女の英真への熱量は、双方、釣り合っていなかった。逢って一年程度の男の方が、彼女の中では英真より格上だったのだ。

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