
ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
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先の選挙の結果が出るまで、織葉は愛津と示し合わせて、夏以降の関係を伏せていた。
えれんに精神的負担をかけまいとしての秘匿だったが、隙あらば二人の時間を確保していた織葉達に、英真を除いて事務所にいる誰一人、何か気付いた様子はない。案外、人は他人にそこまで興味もないのだろう。
いっそ隠し通せはしないか、と愛津が言い出したことがある。
彼女の意見は、理に適っている。一部の企業や芸能界とて、よくあることだ。表に出ても、法には触れない。
だが中にはひと握りの例外があって、織葉はそこに該当している。
選挙運動期間中、罪悪感に苛まれるようなことは愛津ともえれんともなかったが、このところ愛津とはデートらしいデートを再開して、緊張の糸の切れたえれんは、織葉に母娘らしからぬ接触を求める。
えれんとの甘ったるい関係は、普通でない。
そうと知ったあとも織葉が彼女と肉体関係を続けて、二十年は経つ。
彼女は希望だ。月並みの女以上に脆く、庇護すべき主人。この執着が主従の感情を超えたことはなかったが、きっと愛だの恋だのに紐づくものは超えている。初恋を断って、久しく胸をきららかに揺らした愛津と夢にまで見た関係になれたあとにも、織葉は彼女の所有下にいる。
